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  • CINEMA EOS 商品情報

VOICE CINEMA EOS SYSTEMを体験した、プロフェッショナルたちの活用事例。

CINEMA EOS SYSTEM

フジファブリック 「ZEPPダイバーシティ東京」ライブ
EOS C300/C300 PL

映像監督 大沢昌史さん 「ハンディ運用が可能なカメラとしてEOS C300を選択」

日本を代表するオルタナティブ・ロックバンドのフジファブリック。2012年12月11日にZEPPダイバーシティ東京で行われたライブを、10台のEOS C300とXF 100/XF 105それぞれ1台、合計12台のカメラを使って、Blu-rayディスク用に収録しました。EOS C300は8台がEFマウント仕様で、残り2台がPLマウント仕様です。レンズはEF24-70mm F2.8L II USMを5本、EF24-105mm F4L IS USMを3本、EF70-200mm F2.8L IS USMを4本などを用意しました。

カメラは、会場後方のPA卓に3台、2階客席に1台を三脚に載せて配置したほか、ステージ下手のキーボード後方からは、1台をクレーンに載せてリモート操作しました。キーボードとドラムの奥になるステージ後方にはXFを配置して、これもリモート操作しています。さらに、ステージ上手/下手と、ステージ前方の客席前からキーボード、ギター、ベースを狙うカメラを配置。これら5台のカメラは、一脚や簡易三脚を補助に使用したハンディ撮影をしました。

他のアーティストのライブを撮る時はカメラを三脚に固定して、撮影も長回ししていることが多いのですが、今回のフジファブリックはライブハウスでの演奏だったこともあり、ハンディでドキュメンタリー的に撮ることでメンバーの表情や演奏の躍動感を出せるようにと考えました。ハンディ運用するためには、取り回ししやすいコンパクトなサイズのカメラが必要です。しかし、ライブ照明や後方に流れるLEDパネルの映像といったステージ演出など、ライブの空気感を映し撮るための映像クオリティも欠かせません。この2つを兼ね備えたカメラとしてEOS C300を使う事に決めました。

当初の打ち合わせでは、ステージ周りのハンディ運用するカメラだけをEOS C300にして、客席から撮影するカメラは別の機種にすることも検討しましたが、10年以上いっしょに制作をしてきているカメラマンからも「最近はEOS C300だけで撮影する制作も増えてきている」と聞き、EOS C300を中心にすることにしました。

写真:フジファブリック「ZEPPダイバーシティ東京」ライブ撮影現場

収録カメラポジション及びケーブル配線図

「ライティングに合わせて感度を変更しながら撮影」

ライブ進行でつぎつぎに変わるライティングに合わせて、映像の明るさもコントロールする必要がありますが、今回の撮影では、EOS C300の大型イメージセンサーを生かして、開放に近い状態で被写界深度を浅くして撮りたいと考えていました。そのため、絞りを変えずに、感度で明るさを調整しています。Logのベース感度ISO 850からISO 5000までを使用しましたが、高感度に変えてもノイズも少ない、ダイナミックレンジの広い映像が撮れました。ステージ後方のXFカメラは、ライブ中に感度をマニュアルで変えることができないため、感度はAUTOに設定して撮影しました。

通常、マルチカム運用をするために、カメラコントロールユニットを使用できるカメラをすることが多いと思います。EOS C300もXFも対応するカメラコントロールユニットはありませんが、今回の撮影では私が監督であり、テクニカルディレクターも務めていましたので、あまり気になりませんでした。これまでにも、マルチカム運用にデジタル一眼を組み合わせ、映像をモニタリングしながら、インカムでカメラマンに連絡して調整しながら撮った経験があり、カメラコントロールユニットがなくても同じ方法で撮れると考えました。

今回は、クレーンに載せたEOS C300と、PA横からステージの寄りカットはカメラの横にVEを配置して、その場で調整できるようにしていました。ステージ近くの2階の控え室に12台全てのカメラ映像を引き込み、チーフVEが映像の明るさをモニタリングしています。ライブスイッチャーを使用してカメラ映像を32型ディスプレイに分割して表示するとともに、ソース映像の確認を17型マスタモニターで確認しています。これらの映像をもとに、チーフVEが明るさや構図を判断して、カメラマンに指示を出しました。さらに、ライブ中の曲の長さや歌詞、誰がフィーチャーされるのか、間奏が何小節でベースとドラムの掛け合いが入るというようなライブ進行の詳細が分かる台本に沿って、スクリプターがカメラマンに撮影内容の指示をしています。

今回は被写界深度優先で絞り固定で撮影したので、撮影中の映像の明るさは感度で調整するしかありません。感度が段階的にしか設定できないので、調整前後の映像の変化は明らかで、編集段階でちょっと苦労しました。映像のモニタリングにおいては、ビューイングLUTを当てることなく、チーフVEがカメラ出力だけで判断しています。私は、モニターを見ながら、作品全体のバランスのなかで何をどう撮るかを考えてカメラマンに指示を出していました。色味や明るさなどはチーフVEの感覚に合わせて調整が行われることになり、チーフVEが撮影監督の役目を担っている感じです。こうした撮影が増えてくると、VEのセンスがもっとも大事になってくるのではないでしょうか。

写真:フジファブリック「ZEPPダイバーシティ東京」ライブ撮影現場写真:フジファブリック「ZEPPダイバーシティ東京」ライブ撮影現場

「Canon Logとカスタムピクチャーを併用して効率化」

映像は、すべて本体のCFカードにCanon Logをカスタムピクチャーで調整して収録しています。XF100を自ら所有し、普段からMXFフォーマットを使っていたので、EOS C300のマルチカム運用であっても戸惑うことはありませんでした。ライブ終了後、現場で3台のPC、3台のHDDを使用してEOS C300/XF 100/XF105のCFカードからハードディスクにデータをコピー。後日、1台のハードディスクにデータを整理し、さらに2台のハードディスクにバックアップコピーすることで、合計3つのマスターデータを作成しています。

撮影ではCanon Logを使用しましたが、ポスプロの段階で色をしっかり作り込むだけの時間も予算も余裕はなかったので、カスタムピクチャーも併用してあらかじめ暗部をコントロールしてから収録しています。

編集作業は、レスパスビジョンで行っています。レスパスビジョンは、オフラインからフィニッシング、MAまで一貫した制作が可能で、マルチカム編集には欠かせない4~30面単位で無制限にマルチ画面を増やせるオリジナルマルチシステムがあるため、10年以上、利用させていただいています。完成した映像は、Blu-ray用マスターデータとしてHDCAM SRへと書き出して納品しました。作業は、オリジナルマルチシステムで使用するデータ変換に1日、オフライン作業に5日かけました。この段階でクライアントに内容を確認してもらい、OKをもらってからオンライン編集に入って1日、カラーグレーディングに1日、さらにMAと、トータルで10日間ほどの作業で最終出力まで仕上げることができました。

EOS C300ではCanon Logとともにカスタムピクチャーを使用したことで、オンライン編集段階ではコントラストを調整したり、感度変更に伴う明るさを調整するだけで、カラーコレクションをすることなく作業を終えることができました。作業をしたエディターは「EOS C300は、それぞれのカメラのばらつきがなく、色味を補正することなく、一気に完成させることができたのが素晴らしかった」と話していましたね。

XFで撮影したサブカットについては、Canon Logを使用したカットとは明らかに色味が異なる映像のため、EOS C300の映像に合うようにカラーコレクションを行っています。センサーサイズが異なるため、本来は被写界深度の感じも異なってきますが、キーボードとドラムという近距離のものを撮影したことで、違和感は生じません。EOS C300の映像のなかに加えても、XFで撮影したとは感じられないほど高画質な映像だったと思います。

写真:フジファブリック「ZEPPダイバーシティ東京」ライブ撮影現場

「豊かな階調で、レンズフレアも綺麗に表現できた」

ライブ収録はカメラ台数を増やす傾向にありますが、無闇に増やすスタイルは好きではないんです。少ないカメラで、ライブを理解しているカメラマンが撮った映像を長く見せていく方が好きですね。そのため、長期間かけてカメラマンとの信頼関係を築くようにしています。今回初めてEOS C300でのライブ撮影に取り組みましたが、信頼できるカメラマンにお願いしたので、不安はありませんでした。

実際に撮られた映像ですが、豊かな階調表現で、特にレンズフレアが綺麗に表現できていましたね。ライブなのでストロボライトも使用しているのですがCMOSセンサー特有のフラッシュバンド現象も出ることがなかったです。MA作業に入る時には、音合わせ用に軽いデータのQuickTimeムービーを作ります。通常のカムコーダー映像ではノイズが乗ってしまうのですが、EOS C300の映像は軽いデータになってもしっかり細部が表示され、MA担当者から作業もしやすかったと評価してもらえました。

手持ち撮影していると、本体横の操作パネルは無意識に触ってしまうことがありました。照明の暗い会場ですから、設定を確認しづらいことも多く、あらかじめ設定がズレないようにテープなどを貼っておくといった工夫もしていました。

使ってみると改善して欲しい点は見受けられますが、EOS C300のコンパクトなボディは、16mmフィルムカメラを持ち歩いて撮っていた時のことを思い出させてくれるようなフォルムで気に入っています。今後も、撮影内容に合わせて活用していければと思っています。

写真:フジファブリック「ZEPPダイバーシティ東京」ライブ撮影現場

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