社会人向け専門スクールであるデジタルハリウッド東京校では、キヤノンが2012年11月27日に発売したデジタルシネマカメラ EOS C100を導入しました。EOS C100は、2013年1月に開講予定の「映像クリエイター専攻」コースの授業に活用されることになっています。コース開講に先立ち、12月1日には、8月から授業を行ってきた同コースの特別授業を実施。EOS C100で撮影した映像を利用して作品作りを体験しました。
「映像クリエイター専攻」コースは、社会人が通うことができる、ポストプロダクションに対応したカリキュラムとして、撮影実習をしながら、編集や合成を学んでいくコースになります。CINEMA EOS SYSTEMシリーズが出揃い、これらのカメラが普及するほど、高画質な映像を生かしながら制作をどう効率化していくのかという需要は出て来るので、そこに対応したコース運営にしていきたいと思っています。CINEMA EOS SYSTEMに特化した授業というものではありませんが、社会人向け専門スクールとして、業務用のEOS C100を活用しながら、汎用のデジタル一眼やビデオカメラを使って撮影して編集するスキルを学ぶことができるようにします。
映像制作を学びたいという人は、着実に増えています。以前、映像を映し出すディスプレイといえばテレビの画面と映画のくらいでしたが、今は携帯やゲーム機、ウェブサイト、デジタルサイネージなど、さまざまなサイズのディスプレイが溢れています。映像という意味では共通ですが、コンテンツをどのサイズでどう見せるかということが重要になってきています。以前「VFXコース」を開講していた時は、映画系の実写合成を学びたいという人に受講していただいていました。現在は映画業界に行きたい人ばかりではなく、企業活動の中で映像を生かしたいという方の受講が増えています。映像業界ではない分野の人たちにとっても映像制作スキルが必要になってきている時代になってきたということでもあり、「映像クリエイター専攻」コースはその時代ニーズにマッチしたコースになっています。
EOS C100を導入したのは、高画質でありながらコンパクトであり、レンズ交換もでき、撮れる映像と本体価格とのコストパフォーマンスに優れたカメラであるためです。社会人が企業で映像を扱うためには、大型のビデオカメラと大型ビデオ三脚を使用し、チームを組んで撮影をするような従来の撮影手法を学ぶよりも、馴染みのある写真撮影と同じように作業ができるということも重要と考えました。レンズ交換ができることで、キヤノンレンズの資産を生かしながら作品の幅も拡げられると思います。これから映像制作に携わっていく人にとって、EOS C100はベストな機材選択になるのではないでしょうか。
「映像クリエイター専攻」は、単科受講が可能なスクールの授業なので、現場でCGを制作していて映像編集のスキルを身に付けたい人や、紙媒体の仕事をしているんだけれども映像を使えるようにすることで幅を拡げたい人が参加しています。スキルアップのためのクラスなので、社会人が多いことも特長です。
これまではHDVテープにブルーバック撮影した素材を編集して、CGに合成して作品に仕上げるというコースになっていました。ビデオキャプチャするのにも時間がかかるため、あまり撮影面に踏み込んだ内容ではなかったんです。むしろ実写を使用しなくても、After Effectsを使用してモーショングラフィックスを作成できるように構成していました。しかし、実際の現場では、実写素材をキャプチャして編集することが増えてきていますので、今回のコースから高画質なカメラを使って実際に撮ってみるという内容をカリキュラムに組み込みました。
編集素材には、イラスト、写真、動画が必要になります。デジタルハリウッドの場合、動画は3GCGソフトウエアで制作するのが本来の形ですが、「映像クリエイター専攻」コースについては3DCG制作をしたことがない人も対象にしているので、写真やイラストを動かすモーショングラフィックスが中心になります。今回EOS C100を導入したことで、モーショングラフィックスに加えて、実写の制作もできるように発展させました。日本の映像作品で一番弱い部分は実写合成。この部分を学校で学べるのは、デジタルハリウッドならではの部分です。EOS C100がいつでも使えるようになることで、実写にタイトルを載せたり、BGMを付けたりして、テレビ番組素材を練習で作れるようなレベルにまでスキルアップできるのではないかと期待しています。
デジタル一眼を使用して撮影している人もいますが、デジタル一眼は動画専用のカメラではありませんし、高品質な動画を撮影するEOS C100は魅力的なカメラですね。実写をあまり撮ったことがない人であっても、「これはプロに撮ってもらったのでは?」と思わせる映像を撮ることができるのは、それだけ扱いやすいカメラである証拠かもしれません。もっとカメラに馴染んで、さらに使い込んでみたいと思います。
何年も授業を担当して来て、EOS C100の映像品質は、実写を授業に導入したいと感じさせてくれるものでした。ブルーバック素材を抜く作業をしてみましたが、想像以上にきれいに抜くことができました。フォーカスの合っている部分だけを抜くこともしやすいので、編集に時間をかけることができるようになります。これまではブルーバックを抜く作業に時間を費やしていたことを考えれば、編集作業で作り込めるようになり、作品のクオリティが確実に上がるでしょうね。作品のクオリティが上げられるならEOS C100で撮りたいと思うでしょうし、実際に撮ってみればやはりクオリティが上がる。うまくループして技術向上が図られていくのではと期待します。
EOS C100の良さは、屋外で撮影した時に発揮される印象があります。EOS C100を使い始めると、受講生からも屋外で撮影したいという希望も出てくるでしょう。2013年度はデジタルハリウッド大学・大学院とともに専門スクールも新校舎に移転しますし、デジタルハリウッドとして屋外撮影をウリにすることもできそうです。
EOS C100の映像は鮮明で、実写合成にも生かせるクオリティだと感じました。フルHDなので、処理は重くなるのですが、それは「ウレシイ重さ」で、実写合成の作り込み作業が楽しくなりますね。AVCHDなので、速い動きのところには問題が生じる可能性もあるかもしれませんが、授業で利用する素材を撮るには気にならないですね。AVCHDとは思えない、きれいな映像が撮れるカメラだと思います。
EOS C100はSuper 35mmサイズのイメージセンサーなので、フォーカスはシビアに合わせなければなりませんが、マニュアルフォーカスで撮影していた人には非常に向いているカメラだと思います。キヤノンのカメラは、RGBのカラーバランスやガンマの考え方が非常に扱いやすいです。ホワイトバランスについても、色温度をダイレクトに数値で指定できるのもありがたいです。ブルーバックで4500Kの光源で撮影するなら5500Kに合わせてちょっと赤めに撮影しておいて、コントラストをつけてフォーカスをしっかり合わせれば、背景の青が多少かぶっていてもきれいに抜けます。背景はボケた青ですし、人物はフォーカスが合った黒ずんだ青なので、色域が違うので抜きにくいことはないはずです。EOS C100はエッジのピクセルがしっかり保たれているので、色差をうまく使いながら撮影ができる点でもポテンシャルが高いです。
感度設定でも始めは戸惑いました。ビデオエンジニアとしては、通常はゲインを用いるのですが、ISO感度を6000や8000に上げてしまってもいいのかと思いました。実際に撮影してみると、ISO8000でノイズが出ないことに驚きました。ゲイン表示に戻して確認してみましたが、+24dBになっても荒れなかったので、ゲインを上げて撮影できるということが楽しみになりました。ノイズを意図的に足して映像を撮りたい時は困るかもしれませんね。
EOS C100のポテンシャルを考えると、このカメラだけで撮られる映画も出てくると思います。これまでであれば、カメラ、データメディア、照明などのコストに加えて、アシスタントなどの人件費もかかっていました。コストパフォーマンスに優れたEOS C100の登場で、おそらく制作コストがかけられない若いクリエイターが高品質な作品を作れる機会が確実に増えると思います。想像していた以上にきれいな映像が撮れているので、映画だけでなく、CMやドラマにも活用できます。さまざまに活用できるカメラが登場したと、久しぶりに興奮しています。
「思っていたよりも、すごくきれいに映るんだなというのが第一印象。こういうカメラを、自分で自在に扱えるようになったら面白いだろうなと思います」
「ビデオ自体あまり触ったことがなかったんですけど、高性能なカメラでありながら、コンパクトで使いやすそうだなと感じました。レンズが交換できるのも興味深かったですね。作品に応じて、いろいろ使い分けることができて幅が拡がりそうです」
「撮影した映像がきれい過ぎて、CG合成をするなら素材を相当作り込まないといけないなと感じました。実写ベースのCMに使ったら、繊細な色味も再現できるんだろうなと思いました。映画の利用にも興味がありますね」
「仕事では撮影現場に入ることが多いんですけど、現場でも注目されているカメラです。ボディーがコンパクトなぶん、レンズ側が重くなるので、しっかりとした三脚が欲しくなります」
「すごくきれいに撮れるので、自分でも欲しくなりました。レンズを変えながら使ってみて、こんな表現ができるんじゃないかなと、いろいろアイデアが湧いてくるカメラでした」