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高速道路構造物の変状を自動検出するAIシステムを共同開発株式会社 高速道路総合技術研究所(NEXCO総研)

業種:建設・不動産|  従業員数:約190名(2025年5月現在) | 成果:顧客/従業員満足度向上、業務効率の向上/安定稼働、安全/安心

高速道路の安全・安心を支え、より良い社会の実現に貢献する、株式会社高速道路総合技術研究所(NEXCO総研)

高速道路の技術領域において、高水準で効率的な調査・研究、技術開発、および技術支援を担い、NEXCOグループ全体の発展と社会への貢献をめざす技術機関。時代の変化とともに多様化するニーズに即応し、AIやICTを活用したDXによる業務の効率化・高度化に注力するほか、点検支援技術を用いた点検内業時間の削減、生産性向上のためのAIシステムの開発を行っています。

同社では、2020年度よりキヤノンと株式会社東設土木コンサルタント(以下TCC)との3社による共同研究を実施。高解像度画像から、ひび割れ、エフロレッセンス、漏水、鉄筋露出、はく落などの変状を自動検出する「インスペクション EYE for インフラ Cloud Edition」を共同開発し、全国での試行運用がスタートしています。

基盤整備推進部の山川氏、釘野氏、佐木氏、瀬戸氏に、開発の背景や開発の課題、試行運用後の評価などについて詳しく伺いました。

導入のポイント

お客さまの課題
  • 老朽化した構造物の詳細点検を、限られた人員・予算で継続する必要がある
  • 近接目視点検は工数が大きく、効率化と生産性向上が求められている
  • 画像のピンボケや影などにより、AIの変状検出精度が安定しない場合がある
解決策
  • 高解像度画像×AIで、ひび割れ・漏水・はく落など12種の変状を自動検出
  • ひび割れ検知精度約99%、極細ひび割れ検出など、高精度AIモデルを採用
  • 構造物の変状情報を客観的データとして記録・管理できるデジタル化基盤を提供
導入効果
  • ひび割れ検出精度の向上や作業時間を短縮する評価が得られた
  • AIによる変状可視化により、若手技術者の教育や社内照査の効率化
  • 変状データを緻密に記録が可能になり、構造物の高度な維持管理につながる

導入ソリューション・製品

画像ベースインフラ構造物点検サービス「インスペクションEYE for インフラ Cloud Edition」
検知対象のインフラ構造物を撮影し、その画像を合成、補正を行った後、本サービスにてAIでの変状検知の実施が可能です。
社会インフラの老朽化が進む中、労働人口の減少、技術者の高齢化という社会課題に対して画像処理技術で応えるものです。 従来点検者が近接目視で行っていた変状確認を、カメラで撮影した画像をAIを用いて変状検知を行い、従来手法の課題を解決します。

 開発の経緯高速道路構造物の点検・診断業務の高度化・効率化は果たすべき使命

「インスペクション EYE for インフラ Cloud Edition」のメインエンジンである変状検出AIの共同開発に至った経緯や背景について伺いました。

「AI×高解像度画像」による変状の自動検出を目標に開発スタート

基盤整備推進部 管理基盤推進室
室長 山川 進 氏

社会全体で高速道路構造物の老朽化が進行する中、NEXCOグループでは限られた予算と人員で5年 に一度の詳細点検を持続的に実施する必要があります。そこで点検業務に要する時間を削減して生産 性の向上を図り、維持管理業務を高度化・効率化するために2020年より共同研究を開始しました。

主たる目標は高解像度画像から変状を自動検出し、変状の個別判定や健全度評価を支援するシステム の実現とAI活用の適応範囲検証・ルール策定などを行うこと。さらに、DXの推進という観点で従来の スケッチ図ではなく、変状を高解像度画像からの客観的なデータ(CADデータ等)として記録・管理 し、劣化状況の把握やデータに基づいた支援を可能にする機能性の確立を目指すこととしました。

キヤノンの高度なAI技術を有効活用

基盤整備推進部 管理基盤推進室
主任研究員 釘野 公寿 氏

社内で協議を重ね、その目標達成には「インスペクション EYE for インフラ Cloud Edition」の技術をベースとして共同 研究開発を進めていくことが実現の近道であるとの結論に至りました。加えて、ひび割れ誤検出の 少なさ、他のAI技術と比較してひび割れを連続的に検出可能という特徴も開発を成功に導く、重要な 要素であると捉えていました。こうした経緯でキヤノンさんとTCCさん、および当社の3社体制での 研究を継続的に進めています。

開発の課題基準を満たす高精細画像の確保とAI検出の精度向上が不可欠

AIを活用した画像点検の実運用に向けてシステムをブラッシュアップしていくにあたって、実際の開発現場ではどのような課題があったのでしょうか。

課題その1:画像の品質確保(撮影技術)

基盤整備推進部 管理基盤推進室
研究員 佐木 勇一郎 氏

AIが変状を正確に検出できるかどうかは入力画像の品質に大きく左右され、AIの性能を高める にはマニュアルを遵守し、ピンボケやブレの少ない画像を使用することが必須条件となります。
また、高速道路構造物の影や漏水、汚れ(錆汁、黒カビなど)で黒く見えるコンクリート面など、露出 が極端に暗い箇所では、AIが変状を検出できなかったり、誤検出したりする傾向が見られました。

課題その2:AI検出の信頼性(精度)の向上

基盤整備推進部 管理基盤推進室
研究員 瀬戸 大輔 氏

AIを実用的な支援技術とするためには、「変状の見落としの少なさ(再現性)」と「誤って検出する 少なさ(適合性)」の課題を克服する必要がありました。
従来のAIではエフロレッセンスを伴うひび割れの検出が難しく、見落としの大きな要因となって います。加えて、数ミリ以上の太いひび割れについても、学習データが少なく未検出となる可能性が ありました。
AI性能の明確な基準はまだ確立途上であり、精度評価は変状の個別判定や健全度評価を実務 支援に活用する場合を想定して検証を進める必要があります。

これらの課題をクリアし、十分な機能性を発揮できるシステムを実現するべく開発に取り組んでおり、現時点でのAI活用は点検技術者によるチェックや修正を前提とした運用を想定しています。

試行運用後の評価AI自動検出の精度や実務支援ツールとしての機能性の高さを確認

業務の質向上や効率化を実感したとの意見が多数

全国各地にあるNEXCOグループ内の複数のエンジニアリング会社で試行運用を行い、実用化に 向けた課題を整理しました。

AIの検出性能については、変状の種類によって評価が分かれましたが、 全体的には実務支援ツールとしての十分な実用の可能性を確認できています。
ひび割れ検出精度に ついては、多くの現場から「良好で満足できる精度である」「作業時間が大幅に軽減された」という 評価が得られました。
はく落、錆汁、鉄筋露出については「概ね良好」というポジティブな意見が多い なか、漏水やエフロレッセンスに関しての精度向上を求める声があり、新たな課題が見つかりました。

また、AIの活用によって変状データを緻密に記録できるため、「変状の進行性の把握による高度な 維持管理につながる」という意見や「AIによる判定結果の可視化は、若手技術者の教育や社内照査 の効率化に役立つ」といった将来的な期待を示す声も寄せられています。

点検技術者が目視点検しチョークで印をつけた撮影画像(サンプル)
AIによるひび割れ自動検出結果(サンプル)

実用化に向けて本格始動

AIの性能は、継続的な学習により大幅に向上しており、実務支援ツールとして十分に活用できると 実感しています。システムの使い勝手についてもクラウドの優れた利便性に加え、自動判定支援 機能の操作性に関するアンケートでは9割以上が「普通」「簡単」との回答結果となり、非常に高く評価 されています。今後の本格運用を視野に、試行運用の結果と合わせて工数の削減状況など、具体的 な成果をより詳細に分析していきたいと考えています。

今後の展開高速道路構造物の点検・診断における基盤技術への昇華をめざす

「インスペクション EYE for インフラ Cloud Edition」の試行運用を経て、本格的に 実用化をめざず同社。最後に、今後の取り組みや展望について伺いました。

業界をリードする、より高性能なシステムへ

「インスペクション EYE for インフラ Cloud Edition」を点検技術者の『支援ツール』 として業務に活用し、最終的には維持管理業務の質を担保する『基盤技術』へと 発展させることで、さらなる効率化と高度化を実現できればと考えています。

具体的には3つの方法で実務への適用拡大と性能アップを目指しています。
(1)変状検出AIの成果を基にした自動判定支援の実用化
(2)変状の進行性を把握するためのAIの検討
(3)効率的な精度向上に向けた継続的な学習方法の検討

目前の課題をクリアし、実用化を成し遂げる

AIの性能向上や自動判定支援の実現性が確認できた一方で、本格運用へ移行するための課題も残っています。
具体的には実務運用の際に要求される 精度の明確化などが不可欠であると考えています。 キヤノンさんには共同研究のパートナーとして、AIモデルの継続的な改善へのご協力を期待しております。

課題となっている漏水や錆汁など、教師デー タが不足している変状種についても、画像収集や学習モデルの継続的な改善に取り組み、これからの時代のスタンダードとなるシステムを一刻も早くカタ チにできるよう力を尽くします。

  • 本記事は取材時(2025年11月)のものです。

株式会社 高速道路総合技術研究所(NEXCO総研)

事業内容:高速道路の調査・研究・技術開発事業等
職員数:約190名(2025年5月現在)
所在地:東京都町田市忠生一丁目4番地1
設立:2007年4月2日

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インスペクション EYE for インフラに関するお問い合わせ

キヤノンマーケティングジャパン株式会社 NVS企画第一課