制約された設置条件の下、開放感あふれる施設での防犯強化と利用人数の把握を一つのシステムで両立延岡市駅前複合施設 エンクロス
業種:官公庁・自治体 | 従業員規模:-名 | 成果:安全・安心、顧客満足度向上、セキュリティ強化
人口減少が進む地方都市にあって、どのように街の再生を図るかは喫緊の課題であり、各自治体でさまざまな試みが行われています。
そんな中、一つの方法論として全国から注目を集めるのが、街ににぎわいをつくることを目的に公共施設でありながら民間に運営を委託した延岡市駅前複合施設「エンクロス」です。同施設では、オープンに際し、館内に40台のネットワークカメラを導入。セキュリティ強化を図るとともに、人数カウントも実施。毎日の利用人数を計測し、公共事業としての成果を把握できるしくみを整えました。
導入背景セキュリティの強化に加え、利用人数の把握が施設の一番の課題に
民間に運営を委託し、2フロアからなる館内には待合いスペース、情報発信スペース、キッズスペース、図書閲覧スペース、市民活動スペース、書店、カフェなどが設けられたエンクロス。延岡市 商工観光部 商業・駅まち振興課の日髙氏が語ります。
「人口減少が深刻化する中、延岡市では2008年頃から中心市街地をどう再生していくかについて議論が進められてきました。そして行き着いたのが、市民活動でまちの中心ににぎわいをつくろうという発想です。具体的には、市民の皆さんが気軽に立ち寄って、市民活動はもとより仕事や勉強、その他自由に時間を過ごせる場所を目指し、そうした施設づくりの実績・ノウハウが豊富なカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社に運営を委託。蔦屋書店とスターバックスコーヒーを設置し、市が所有する書籍も開放して、館内どこでも好きなところで読めるスタイルにしました。そこで浮上してきたのが、防犯上の問題です。販売本と市の財産である閲覧本を自由に持ち運べるからには、セキュリティの強化が不可欠ということですね。また、公共事業である以上、当然、成果も大事であり、そのためには利用人数の把握が必要です。例えば、出入り口にゲートを設置して人数カウントをするやり方がありますが、当施設の場合は市民が気軽に利用できるオープンな空間を意識して出入り口を数多く設けたため、この方法は使えそうにありません。そんな時に出会ったのが、キヤノンのネットワークカメラでした」。
選定理由斜めの角度からでも人数カウントできるのはキヤノンだけ
防犯と利用人数の把握。二つの課題を解決するネットワークカメラ選定の詳しい事情について、同市 都市建設部 建築住宅課の熊埜御堂氏が続けます。
「ゲートでの人数カウントが困難なのに加え、当施設は入り口を入ってすぐのところが吹き抜けになっているため、天井への機器設置も難しい状況でした。では、真上ではなく、斜めからでもカウントが可能な装置はないだろうか。工事業者と打ち合わせをしていた際に提案を受けたのが、キヤノンのネットワークカメラです。選定理由として何よりも大きかったのは、設置のフレキシブルさです。比較検討してみたところ、カメラに付随する人数カウントというのは各社ありましたが、どこも画角が頭の上のほうから。天井が高く、開放感のある当施設への設置には向きませんでした。一方、そうした制約がなかったのがキヤノンです。もともと防犯は防犯、人数カウントは人数カウントということで全く別物で考えていましたが、キヤノンのネットワークカメラを導入することで両方の課題を同時に解決できることがわかりました。うちの施設づくりに対応できるのは、キヤノンしかいない。そう考え、人数カウントができる8台を含む、全40台のネットワークカメラの導入を決めました」。
導入後の成果施設がどんな成果を生んでいるのか数字で実証されることに
延岡駅の1日の乗降客数 約2,500人に対し、2/3程度の人数が利用していると推測されるなど、好調な客足が続くエンクロス。以前は駅舎=単なる通過場所でしたが、今ではゆっくり仕事をしながら電車を待っている人がいたり、図書館がわりに勉強をしている人がいたりと、施設の利用が想像以上に広がってきていることが、人数カウントの結果からも見て取れると語るのは、商業・駅まち振興課の合志氏です。
「さらに防犯という部分では、事務所に設置してある16分割されたモニターを通じて一括監視し、館内の至るところをリアルタイムでいつでも確認できる状態です。また、トラブル対応として後から録画映像の見直しを行うこともありますが、拡大しても画質的にはまったく問題ありません。
過去にお客さまから連絡や相談などを受けた際には、映像の確認により、その日のうちに迅速に解決を図ることができました。キヤノンのネットワークカメラはコンパクトで、道ゆく人に威圧感を与えることがないので、空間を大切にする当施設の考えともマッチしていますし、そういった意味でも非常に評価しています」。
今後の展望今後は映像の解析によるレイアウトの変更なども視野に
老若男女問わず、誰もがいつでも訪れて、自由な時間を過ごすことができ、さらに多様な人たちとの交流を通して新しい地域のチカラが育まれていく。施設側が思い描いていたビジョンが街の人々にも浸透し、憩いのひとときを過ごすことができる場所として今や無くてはならない存在になりつつあるエンクロス。この先の展望について日髙氏に伺うと、「今後はどの時間帯にどこに人が多く出入りしているかなどの解析を行い、それに応じてレイアウトの変更にもつなげていければと考えています」と答えてくれました。ネットワークカメラのさらなる可能性という部分では、人数カウントのみならず、顔認証で性別や世代などの属性を推測しマーケティングに役立てたり、あらかじめ用意しておいたリストと照合することで特定の人物の来場を知らせるようなことも可能になってきています。地方都市における街の再生のあり方として全国から支持を集めるエンクロスの先進的な取り組みに、今後も引き続き注目していきたいと思います。
延岡市駅前複合施設 エンクロス
2018年4月、「新しく 自由のあるまち」をコンセプトにオープンした、延岡市内で初の年中無休の公共施設です。約2万冊の閲覧図書と蔦屋書店の本をスターバックスコーヒーとともに館内のどこでも楽しめる上に、キッズスペースや授乳室などもしっかり完備しているとあって、小さなお子さま連れの方から仕事帰りの方まで、一日中にぎわいを見せています。
所在地:宮崎県延岡市幸町3丁目4266番地5
※本記事は取材時(2018年4月)のものです