働き方改革、進んでいますか?「RPAの活用」で面倒な定型業務などを自動化
これまで人間が行なっていた業務をソフトウエアロボットが代行するRPAは、ITによる生産性向上・働き方改革の本命として大きな注目を浴びています。キヤノンMJグループが加速させるRPAの社内での取り組みを紹介します。
これまで人間が行なっていた業務をソフトウエアロボットが代行するRPAは、ITによる生産性向上・働き方改革の本命として大きな注目を浴びています。日本企業の間でも急速に導入が進んでおり、国内RPA市場は2017年から2022年にかけて10倍の規模になるという予測もあります。
RPAとは
RPAはRobotic Process Automationの略で、従来人間がコンピューターを操作して行っていた業務をソフトウエアで自動化する技術であり、その技術を活用した業務改革手法です。
RPAとは、RPAでできることはこちらで詳しく解説しています。
RPAはどう動くの?
コンピュータで人間が行う動作をRPAのソフトウエアに記録させることで、RPAはその動作を再現し、自動的に作業を繰り返します。
RPAはどんな業務が得意なの?
例えば、帳票入力、伝票作成、ダイレクトメールの発送業務、経費チェック、顧客データの管理、ウェブからの定期的な情報収集といった業務に多くみられる「反復が多く、データ量も多く、工数や利用するソフトウエアが多いもの」に本領を発揮します。RPAの実体はソフトウエアですので、24時間365日、嫌な顔ひとつせずに手間のかかる仕事を正確に黙々とこなします。
RPAとAIの違いは?
AIが自ら学習して判断・行動できる自律的な存在なのに対して、RPAはあくまでも決められたルール(シナリオ)に従って処理を実行する他律型のソフトウエアです。今後は、AIをRPAと組み合わせることで、より高度な非定型業務の自動化なども実現すると考えられています。
急速に成長しているRPA市場
金融やメーカーを皮切りに、サービス業や情報・通信業、勝者・小売などさまざまな業種に導入が進んでいます。大企業に限らず、現在は中小企業も活用を始めています。
1/3の仕事がRPAになる?
日本RPA協会によれば、2025年までに全世界で1億人以上の知的労働者もしくは1/3の仕事がRPAに置き換わると言われています。すなわち、シンプルな仕事はロボットに任せて、人間はより創造的な仕事に専念することができるようになるのです。
キヤノンMJグループにおけるRPA活用の目的
「RPAは仕事の生産性を向上させる強力なツール」
キヤノンMJグループ内には、さまざまな会社や数多くの商材があり、販売チャネルも多岐にわたっています。それによって業務プロセスが非常に複雑化しているのが現状です。その複雑なプロセスを「整理」し、「自動化」し、「業務改革」すること。それがグループ内でRPAを活用する目的です。
キヤノンMJでRPA活用の動きが始まったのは、2016年からです。いくつかの部署でRPAが試行されましたが、取りまとめの部門がなかったために、導入・運用の方法やツールがバラバラであるという問題がありました。そこで、2018年3月にRPAを統括する専任部門が組織化され、その後7月にはRPA推進部としてスタートすることになりました。
RPA推進部の役割は、RPAの導入・運用ルールの一元化、業務ごとの導入可否の判断、導入・運用サポート、事例の蓄積とノウハウの活用、さらに、社内での経験をもとにした外販のサポートです。3月以降、さまざまな部門からメンバーが選出され、それぞれの前任部署の業務の洗い出しを進めています。すでにキヤノンMJ内では8部門で取り組みが始まっていて、グループ会社での取り組み準備や、外販の動きも着々と進んでいます。
RPAに期待される成果は大きく三つあります。始業前の定型業務など、定時外を含む業務時間が減ること、得られた時間で「やりたいのにやれていなかった仕事」ができるようになること、そして、定型業務のヒューマンエラーを限りなくゼロに近づけられることです。
RPAを適用できる業務の定義は明確で、「人間の判断が伴わない業務」です。AIを活用すれば判断も可能になりますが、それはあくまで次の段階であり、現状ではRPAの適用領域は単純な業務に限定されます。 またRPAは、仕事の手順のすべてを事細かに教え込まないと動作しないため、導入するには、業務を整理し、可視化し、マニュアル化する作業が必須です。ここに実はRPA導入がもたらす大きな効果があります。整理の過程でさまざまな無駄が明らかになり、業務をスリム化できる可能性があるからです。そうしてスリム化した業務のうち、単純作業に当たる部分をRPAに任せることで、仕事時間がさらに短縮されることになるのです。
RPA推進の狙いは生産性の向上であり、今まで私たちが取り組んできた業務改革の延長線上にあります。仕事を効率化して時間を生み出し、新たなチャレンジに活用していくために、グループ全体のRPA活用をさらに加速させていきたいと考えています。
活動内容と実績
消耗品自動配送サービスをRPA化
今後の課題と取り組み
労働力の中核をなす生産年齢人口が減少の一途をたどる中、人手不足を補完するために注目されているRPA。当社でもロボットでもできる仕事はロボットに任せ、人間はよりクリエイティブな仕事に専念することで、企業競争力を高めていきたいと考えています。
キヤノンMJグループ内のRPA
単純作業はRPA化し、ヒューマンエラーをゼロに!——キヤノンMJ 契約情報センター
MFPの保守・サービスをはじめ、お客さまとのさまざまな契約情報を統括しているのが、キヤノンMJ契約情報センターです。管理する契約情報は、MFPのカウンター料金をベースとした保守契約が約50万件、そのほかの保守契約が約40万件に上ります。
同センターでは、2018年2月から6課から各2名が参加するRPAタスクチームを結成し、RPA導入の検討を始めました。チームリーダーであり、25年近い契約業務経験をもつAさんは、RPAの効果について当初は懐疑的だったと言います。
どの業務にRPAを適用するかを見極めることが最初のハードルだったと話すのは、開発担当のBさんです。「社内にどのような業務があるのかを洗い出すところから始めました。“RPAを導入するとこういうことができる”というヒントを現場の皆さんに示すことで、適用できそうな業務の候補が現場からどんどん上がってくるようになりました」
一方、チームメンバーで営業経験の長いCさんは、「業務の棚卸」がRPA導入の前提になるとし、「お客さまの業務を分析して深く理解することは、営業の重要な仕事の一つです。それと同じことを社内の各業務に対して行うことが必要です」と話します。
RPAの試行が始まったのは、2018年7月から。まずは、カウンター保守契約情報のデータ登録作業のうち、情報が電子化されているおよそ7割相当の業務をRPAのターゲットに定め、順次導入していくことにしました。
「処理すべき情報が大量にあって、かつ単純な繰り返しが発生する作業がRPAには一番向いています」と話すのは、同じくチームメンバーで電子MG契約登録の開発をしたDさんです。
「そのような作業はとても疲れるので、人間がやると途中からどうしてもミスが発生する可能性が出てきます。しかし、RPAは最初に手順をしっかり教え込めば、ミスをすることはありません」
(1)業務のミスがなくなること、(2)処理スピードが格段に向上すること、(3)スキルによる作業品質のばらつきがなくなること。センター所長のEさんは、RPA導入に期待される効果としてこの3点を挙げています。
「大量のデータ処理をミスなく行おうとすると、現場の人たちは大変なストレスを抱えることになります。そのストレスから解放される効果も非常に大きいと言えますね」
ITSグループのRPA推進役として、人材を育成し裾野を広げる
キヤノンITSで、社内業務へのRPA導入を支援する情報システム部は、その第一弾として、帳票発行業務のRPA化を2018年9月から進めています。
「RPAとはどんなものかを自ら試す目的もあり、まずは二つの事業部で月に計200件ほど発生する業務にRPAを適用することにしました」と話すのは、キヤノンITSグループにおけるRPAの推進役を買って出た情報システム部の阿部さんです。RPAを活用するに当たって最も時間と労力を要するのは、社内各部門を対象としたヒアリングと適用業務の見極めだと言います。
「私たちがRPA適用の基準としたのは、手順が完全に確立していて、ある程度のボリュームがある業務です。ヒアリングの過程でそのような業務はいくつも出てきたのですが、エクセルのマクロ機能の活用や、仕事の仕組みを変えることで効率化できるケースも少なくありませんでした」
その中でRPAによる改善効果が確実に見込めると阿部さんらが判断したのが、帳票発行業務でした。しかし、実際にRPAを稼働させてみると、意外にエラーが多いことがわかったといいます。実際のシナリオ設定を担当した森本さんは話します。
「ロボットは人間が作成したシナリオ通りに作業を進めるだけですから、パソコンのコンディションが原因でエラーが起きるという、想定外のケースも発生しました。RPAを活用する際は、稼働後の微調整を想定した方がよさそうです」
今後の課題としては、キヤノンITSグループ内のロボットの管理をする一方で、開発とメンテナンスができる人材を育成し、RPAの裾野を広げていくことだと阿部さんは言います。
「現在、月に数千件に上る受注システムへの入力業務や、従業員の入退館ログと勤務システムの突合などにRPAを適用する検討を進めているところです。現場の皆さんと連携しながらその適用範囲を広げ、業務改革とナレッジの蓄積を着実に進めていきたいと考えています」
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