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RPAツールを徹底比較。導入効果を最大化する6つのポイントとは

  • 働き方改革
イメージ:RPAツールを徹底比較。導入効果を最大化する6つのポイントとは

RPAツールの導入は、テレワークの促進や人材不足の解消に取り組む企業で急速に進んでいます。キヤノンマーケティングジャパンでは2016年から取り組みを始め、現在は130以上の業務を自動化、年間76,000時間以上の効率化を達成しています。
前回は、RPAツールによる自動化が注目されている理由、導入効果、RPAに向いている業務と向いていない業務などを紹介しました。今回は、RPAツールの種類、導入効果を最大化するためのポイントを紹介します。



RPAツールの型を徹底比較

RPA(Robotic Process Automation/ロボテイック・プロセス・オートメーション)とは、認知技術(ルールエンジン・機械学習・人工知能等)を活用した、おもにホワイトカラー業務の効率化・自動化の取組みです。人の作業を補完して業務を遂行できることから、仮想知的労働者(Digital Labor)とも言われています。

RPAはPC上での複数システムを横断した操作や、正確に同じ操作を繰り返し実行することが得意ですが、人と違い、状況に応じた「判断」はできません。
したがって、RPAツールによる業務の自動化を検討する際は、対象範囲の見極めが重要です。

デスクトップ型

PC1台にロボット1台を導入 1台のロボットが複数の業務を実行 同一PC内では並列実行はできない

サーバー型(A)

サーバー上に複数のロボットを導入 サーバー上のロボットが複数の業務を実行 並列実行できる

サーバー型(B)

サーバー上に複数のロボットを導入 サーバーで制御されたPCでロボットが複数の業務を実行 並列実行できる

RPAツールには様々な製品があります。それぞれ機能や特性が異なりますが、大きく分けて「デスクトップ型」と「サーバー型」の2種類の型があります。この2種類の型の違いを理解した上で、各製品の特性や操作性を比較し、自社のシステムや業務に合った親和性の高いツールを選定することが重要となります。具体的に2つの型の違いについてご紹介します。

デスクトップ型RPAの特長

デスクトップPC内で1台のロボットが稼働し、PC内の作業を自動化します。サーバーの構築が不要で、比較的リーズナブルで導入しやすいため、中小企業や部門・個人レベルなどの現場で完結する業務への導入に適しています。
代表的な製品は、NTTアドバンステクノロジ株式会社の「WinActor」です。

サーバー型RPAの特長

サーバー上で複数のロボットを管理し、横断した業務を自動化します。サーバーの構築が必要なので、デスクトップ型に比べて導入のハードルが高くなります。サーバー型には「すべての作業をサーバーで実行する」「サーバーで制御されたPCで作業を実行する」の2つのタイプに分けることができます。一定の思想やルールに基づいたロボットの管理・実行ができるため、全社展開に適しています。

代表的な製品は、UiPath株式会社の「UiPath」です。

  デスクトップ型 サーバー型(A) サーバー型(B)
管理 PC サーバー
実行 PC サーバー PC
  • サーバーで制御されたPCで実行
導入コスト
導入工数
適用業務 個人や部門の小規模な作業・業務 全社横断業務
特徴 導入コストは少ないが、ロボットを一元管理できないため、適用領域が広がるにつれ野良ロボット化の心配が出てくる 導入・維持ともコストがかかるが、RPA全体の利用実績が明確に把握できるため、PCの空き時間をできるだけ少なくし、最大限活用するなどの利用促進や野良ロボットの抑制に役立つ

RPAツールの選び方

デスクトップ型、サーバー型は「導入規模」と「長期的な導入計画」に着目して選定する必要があります。

導入規模が小さく、長期的にも広く活用する計画はない場合

中小企業、個人企業、少人数の部門など少人数の組織で長期的視点で広く活用する計画がない場合、デスクトップ型の導入を検討しましょう。この場合、担当者個人の定型業務をRPA化し、ロボット専用PC上で自動化する手順で導入が可能です。

  • ロボット専用PCを準備し、デスクトップ型RPAを導入
  • 担当者個人の業務をRPA化し、ロボット専用PCに自動化業務を集約

長期的には広く活用したいが、まずは小さく始めたい場合

長期的に広く活用したい場合でも、初めからコストをかけてサーバー構築するのは現実的ではありません。まずは小さく始めて、徐々に導入規模を広げていくパターンが多いです。この場合、当初デスクトップ型RPAを導入し、ターゲットとなる部門を決めて、特定の業務を自動化します。

RPA導入にあたっては、推進専任担当者を任命することをお勧めします。なぜなら、現場業務を止めることなく、RPAの開発や運用を任せることができるからです。また、専任担当者の知識や経験をRPA導入・活用ルールの確立に生かすこともできます。

導入規模が大きくなってきた時点で、サーバー型を導入します。製品によっては、デスクトップ型からサーバー型へ後から移行できるものもあるので、長期的に広く活用したい場合、ロボット流用の観点からこのようなツールを選択しておくとよいでしょう。

  • 推進専任組織の立ち上げ
  • デスクトップ型のRPAを導入
  • ターゲット部門を決めて業務を自動化
  • サーバー型へ移行
  • RPA導入・活用ルールの確立
  • 全社展開

130以上の業務を自動化、年間76,000時間以上の効率化を達成したキヤノンマーケティングジャパンで採用した方法

キヤノンマーケティングジャパンでは、2016年からRPA活用の検討が始まりました。当時は標準となるRPAツールが確立されておらず、複数のRPAツールを比較検討してきました。結果、デスクトップ型とサーバー型を併用し、デスクトップ型は「WinActor」、サーバー型は「UiPath」の採用に落ち着きました。

部門主導で自部門業務を自動化する場合には「WinActor」、全社横断の大規模な業務を自動化する場合には「UiPath」をそれぞれ活用しています。

RPAツール 導入型 特徴
WinActor デスクトップ型
  • 初心者でも使いやすく、現場で導入しやすい
  • プログラム用語ではなく、平易な単語で表現されたアクティビティのため、直感的に操作しやすい
  • ライブラリ機能が豊富
  • VBスクリプトを直接書くことも可能で拡張性がある
  • 利用部門のセルフ管理で導入
UiPath サーバー型
  • 開発生産性が高く、集中管理が可能
  • 高度なソリューションにも挑戦できる(OCR/AI/IoT連携など)
  • ワークフローが見やすく、操作しやすい
  • 外部ツール連携アクティビティが充実している
  • 開発の難易度がやや高い(多少のITスキルを要する)

実際にRPAを導入する場合、ツールごとに機能や特徴、価格、サポート体制などに違いがあるため、自社の体制やシステム、重視したい機能、適用したい業務などにより選択するツールは変わってきます。

自社のRPA導入の目的を十分に検討した上で、各ツールの比較検証を行い、自社に合ったツールを選択しましょう。

導入効果を最大化する6つのポイント

体制:組織を横断する統括部門での運用(他部門の共有、共通化) 現場部門への断続的な支援を行う 運用:既存業務の分析を行い、業務の洗い出しが必要 RPAを利用する現場部門でメンテナンスできる運用 ツール:現場でも利用しやすいツール スモールスタートから将来的な大規模運用を見据えたツール

ここまでの解説でRPAの特徴をご理解いただけたでしょうか?
RPAに対する期待が高まり、すぐにはじめてみたいと思われた方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん、RPA化するだけでも一定の効果を見込めますが、一過性の取り組みとなり長続きしない場合があります。RPAの効果を最大化し、継続性のある取り組みにしていくためには、社内体制を整え、業務全体の生産性を高める取り組みが不可欠です。そのためには、業務の可視化や断捨離、標準化など、業務プロセスの見直しと合わせた取り組みが重要です。

キヤノンマーケティングジャパンでは、業務プロセスの見直しをはじめとし、RPAの導入効果を最大化するために下記のような取り組みを行っています。

取り組み内容 目的
1.BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)の視点 RPAの導入効果の最大化
2.ボトムアップ開発とトップダウン開発との併用 効率的な全社展開
3.組織体制 ノウハウの共有
継続的な取り組み
4.ルール グループ会社も含めた全社の管理・統制
5.ロボット社員とパスワードの管理 不正防止
6.情報発信 RPAの活性化

1.BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)の視点で考える

目的:RPAの導入効果の最大化
BPMとは、業務プロセスを可視化・見直しし、継続的に改善・最適化していくための取り組みです。キヤノンマーケティングジャパンでは、RPA活用のポイントとして、まずはこのBPMを積極的に進めています。
キヤノンマーケティングジャパンにおけるBPM推進の進め方

キヤノンマーケティングジャパンにおけるBPM推進の進め方

  1. 既存業務の業務量調査・可視化
  2. 業務の断捨離
    業務の必要性を再検討し、不要な業務は思い切って断捨離する
  3. 業務の見直し
    必要な業務は見直して効率化する
  4. 業務の標準化
    部門内だけでなく、部門内では気付きにくい部門横断業務も標準化して効率を高める
  5. RPA化(自動化)

効率の良いRPA化、そしてRPAツールの費用対効果を高めるためには、RPA化前の業務プロセスの可視化・見直しは必須です。RPA化はBPM推進の最終手段と捉えましょう。

2.ボトムアップ開発とトップダウン開発との併用

目的:効率的な全社展開
「デスクトップ型」と「サーバー型」の欄でも紹介しましたが、キヤノンマーケティングジャパンのRPA化は、デスクトップ型ツールを利用した「現場部門によるボトムアップ開発」と、サーバー型ツールを利用した「RPA統括部門によるトップダウン開発」を組み合わせたハイブリッド方式で進める方針を取っています。
「ボトムアップ開発」は、業務を理解しているため、要件定義の生産性が上がり、構築までのスピードアップが期待できます。「トップダウン開発」は開発専任組織なので、大規模な開発にも対応できます。
このようにハイブリッド方式で進めることにより、効率的な全社展開を実現しています。
ハイブリッドで進める ボトムアップ:実施部門(現場部門 ※RPA統括部門が認定した部門) ツール(WinActor) 適用業務(定型業務に限定) メリット(現場の活力も利用でき、モチベーションも向上 業務の理解が早く、ヒアリング等の前工程を短縮) トップダウン:実施部門(RPA統括部門) ツール(UiPath) 適用業務(高度なソリューションにも対応) メリット(統制をかけやすい、ノウハウを蓄積して将来に生かせる 専門家による効率的な構築)

定期 作業をRPAツールで自動化した事例(営業サポート部門のケース)

目的:ノウハウの共有、継続的な取り組み
トップダウン開発を行うRPA統括部門は、グループ会社も含めた全社のRPA開発に対するガバナンスを一元管理する役割も担っています。ボトムアップ開発を行う現場部門に関しては、RPA導入のハードルが低いとはいえ、どの部門でも自由に導入することは認めておらず、「部門内のRPAの作成および継続的な維持管理ができる部門であること」の認定基準を設けており、申請のうえ、RPA統括部門の認定を受けることを必須としています。
また、進捗状況や構築ノウハウを共有するための定例会を毎週(グループ会社は四半期ごと)実施することで、設定した目標に向けて全社一丸となって取り組む意識の醸成を図ると共に、問題解決の場ともなっています。
このように社内体制を整えることで、ノウハウの蓄積・共有ができ、効率的・継続的にRPAに取り組むことが可能となります。

4.ルール

目的:グループ会社も含めた全社の管理・統制
グループ会社を含む全社に向けたルールとして、「RPA導入・活用ルール」と「RPAシナリオ作成ルール」を作成し、これらに基づいて全体の管理・統制を行っています。全社向けルール以外にもキヤノンマーケティングジャパン内でのルールをいくつか定めており、これにより、RPA統括部門と現場部門が統一基準で認識・判断することが可能となり、効率の良い統制、野良ロボットや属人化の防止が実現できています。
  • ロボット作成依頼元担当者の異動や退職により、誰もメンテナンスできない状態になることを「野良ロボット」化と呼ぶ。

対象 制定ルール 目的
グループ会社含む全社 RPA導入・活用ルール ガバナンスの維持を確保するため、RPA利用に関する方針、体制・役割、運用基準・ルール等について記述する
RPAシナリオ作成ルール RPAシナリオを作成する際の方針・ルール、実行環境、運用等について記述する
自社内 RPA管理部門認定ルール ボトムアップ開発を希望する現場部門に対し、部門内でRPA作成および継続的な維持管理ができる部門であることの認定基準を記述する
RPA利用開始承認ルール RPAシナリオ作成後の一定期間の試行実施やソース保管、関係部門への周知方法と利用開始審査基準を記述する
RPA運用管理ルール 運用効率と属人化防止のため、運用管理者を置いている。RPA作成者は運用手順書にシナリオの概要・構成・エラー時の対応などを記述する

5.ロボット社員とパスワードの管理

目的:不正防止
社内業務を行う際に必要となる社員コードですが、RPA用にロボット社員として社員コードを取得し、通常の社員と同様に登録・管理を行っています。実社員のコードでRPA処理を行うことは可能ですが、実際の処理を行ったのは実社員とRPAのどちらなのか、区分けすることができません。
例えば、始業前のRPA処理を実在する社員コードで処理すると、社員が本当に早出をして作業をしたのか、PRAでおこなったのかわからなくなります。
従って、管理しやすいようにロボット社員を採用しています。

社内で使用するアプリケーションの利用権限付与に関しても通常の社員と同じ付与ポリシーに従っています。ただし、あくまでも一般職で、承認行為などは許可していません。また、実在社員の社員コードで代用することも禁止しています。
パスワードも通常の社員と同様、他部門には見えない方法で管理し、定期的に更新を行っています。
イメージ:ロボット社員とパスワードの管理

6.情報発信

目的:RPAの活性化
RPAの全社展開には、全社を巻き込み、参画意識を高めることが非常に大切です。そのための活動として、効果を見える化し、事例を広く公開しています。効果を見える化するために、RPA化した事例ごとに定量効果を数字で示したBefore/After図を作成しています。このBefore/After図やRPAの稼働状況をグループ会社も含めた全社が閲覧できるポータルサイトに掲載し、毎月更新を行うことで、最新情報を共有しています。

Before/After図は各部門・グループ会社共に同一のフォーマットでまとめており、ポータルサイトに掲載された事例を参考にして自部門でのRPA化のヒントにしたり、横展開の検討などにも役立っています。
また、定期的にRPA化の成果を直接報告し合えるような場も設け、RPA未導入部門の実務担当者にRPAの効果を体験してもらったり、経営層へ現場の声を届け、情報共有の機会とするなど、更に全社に認知してもらう活動もおこなっています。

まとめ

RPAツールの種類を比較しながら、導入効果を最大化するポイントについて解説しました。

キヤノンマーケティングジャパンでは、BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)推進における生産性向上の重要な手段としてRPAに取り組み、130以上の業務を自動化、年間76,000時間以上の効率化を達成してきました。

RPAを一過性の取り組みで終わらせず、継続性のある取り組みにしていくためには、社内体制を整え、業務プロセスの見直しと合わせて検討することをおすすめします。

RPAは、生産性向上やコスト削減、人材不足解消など、さまざまなメリットをもたらします。RPAは人の仕事を奪うというイメージを持たれる場合もありますが、単純作業やストレスのかかる業務を代わりに担ってくれるため、人はよりクリエイティブで付加価値の高い業務に注力できるようになります。

キヤノンマーケティングジャパンではグループ全体のRPA活用をさらに進めるとともに、IoTやAI、OCRなどの各種技術とRPAを連携して自動化の範囲を広げていくことを目指します。そして、これらの取り組みの中で得たノウハウやポイントなどを今後も紹介していきます。

RPAツールの導入を検討する際は、本ページで解説したポイントを整理しながら進めることをおすすめします。



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