働き方改革推進のカギとして、いま重要視され始めている「健康経営」
働き方改革を推進する企業が増えてくると共に、広がりつつあるのが健康経営です。近年の研究で「従業員の健康増進が労働生産性の向上につながる」ということがわかってました。こちらのコラムでは、健康経営の具体的取り組み事例と概要についてご紹介します。
働き方改革の推進には社員の健康管理が不可欠
時間外労働の上限規制等が法制化されて、働き方改革を推進する企業が増えてきました。しかし、仕事量は変わらず、労働時間だけが短くなったことで、生産性の向上という課題が残ることに。そこでテレワーク、サテライトオフィスなどの制度・環境の整備とともに、取り組みが広がりつつあるのが健康経営です。健康経営とは、従業員の健康管理を経営課題として捉え、戦略的かつ計画的に取り組む経営手法のこと。業績向上や株価向上などの面からも大変注目されています。なぜ、働き方改革と一緒に健康経営が語られるのかといえば、近年の研究で「従業員の健康増進が労働生産性の向上につながる」ということがわかってきたからです。例えば、出社していても、心身の不調により集中力が持続できなければ、当然、業務のパフォーマンスや生産性は低下しますし、残業続きで疲弊していれば、ちょっとしたミスも起こしやすくなります。このようなことを踏まえ、生まれてきたのが、社員が集中して仕事に取り組める職場づくりや前向きで活発な組織づくりを行うために、まず社員の健康管理から始めましょうという発想です。社員が健康になれば、自ずと生産性向上につながるのはもはや明白といえるのです。
キヤノンマーケティングジャパンでは「健康経営銘柄2019」「健康経営優良法人2019」に選定
働き方改革と並んで健康経営への社会の注目度が高まる中、国も健康経営推進に力を注いでいます。それが、経済産業省主導の下、東京証券取引所の上場会社の中から特に優れた健康経営を実践している法人を選定する「健康経営銘柄」と、上場企業に限らず、地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、優良な健康経営を実践している大規模法人を顕彰する「健康経営優良法人」です。当社では、2018年、「健康経営銘柄」に2年連続で、「健康経営優良法人」には3年連続で選定されました。「健康経営優良法人」には、グループ企業であるキヤノンITソリューションズ、キヤノンシステムアンドサポートも同時に選定されています。
当社では、キヤノングループの行動指針である「健康第一主義」に基づき、「健康で安全に働ける職場環境づくりの推進」を宣言し、健康課題であるがん、生活習慣病、メンタルヘルスに対して戦略的・継続的に取り組んでいます。また、2010年からは「健康管理3ヵ年計画」に基づき、健康意識向上や生活習慣改善などを推進。生活習慣改善に取り組む社員の割合が倍増するなど、職場ごとにテーマを決めて生活習慣改善に取り組む「ヘルシーアクション」などにより、着実に成果を上げています。さらには定期健康診断後の個別のフォロー体制も確立し、2014年以降受診率100%を達成。その他、全社的にがん検診の受診促進に取り組むなど、健康を重視する企業風土が定着しています。
キヤノンマーケティングジャパンの具体的取り組み例
突然の心停止リスクに備える
何の前触れもなく働き盛りの人を襲う突然死。総務省消防庁の資料によると年間約約8万人が心臓を原因をとして心停止で倒れているそうです。誰にでも起こりうるその危険を回避するために、重要なのは突然の心停止リスクを低減する予防対策と発生時の救命対策です。これら両輪の備えが企業の健康経営を推進し、働き方改革を後押しするのです。
1. 予防対策
血圧計の配備による自己管理
心筋梗塞が発症する危険因子には、加齢や脂質異常症、過度の飲酒、運動不足や喫煙などの生活習慣の悪化などが挙げられ、その結果症状として現れる高血圧が最大の危険因子とされています。つまり、心臓突然死を予防するには、生活習慣を改善し、その成果の確認として日常的な血圧管理を行うことが重要です。当社では健康診断で血圧の高かった人には検査当日にすぐチラシを渡してリスクを啓蒙したり、産業医につないだりする一方で、50人以上いる拠点を中心に血圧計を配備。家庭での購入の必要性も啓蒙しながら、自己管理を促進しています。日頃から気軽に血圧を測定する習慣をつけることで、早期に医療機関で治療を開始することが可能になり、突然の心停止リスク低減につながります。
2. 救命対策
AEDの最適配置と啓蒙活動
心筋梗塞を発症すると数日以内に約1割の方が引き起こしてしまうのが心室細動という不整脈。全身に血液を送り出すポンプ機能を失って脳への血流も途絶えてしまうため、仮に命が助かったとしても脳機能障害が残ることになります。倒れている人を発見したら、できるだけ早く胸骨圧迫を中心とした心肺蘇生を施し、AEDによる電気ショックを5分以内に実施して心室細動を取り除くことが、救命率を高めるために不可欠です。例えば本社のS タワーでは、どこで従業員が倒れても5分以内に取りに行けるようAEDの適正配置を推進するとともに、シールやポスターなどを用いて設置場所を視覚的にアナウンスしています。また、半年に一回、社内で心肺蘇生講習会を開催し、救命講習を実施。総務部門を中心に消防署の講習に参加してもらい、社内講習インストラクターも養成しています。
キヤノンマーケティングジャパングループでは、2018年より健康経営の取り組みをグループで統一。各社、足並みをそろえて安全配慮の徹底と自己健康管理力向上、健康風土の醸成を推進してきた結果が、健康経営優良法人への3社同時選定につながりました。過労死などがメディアでも取り上げられる昨今、健康経営への取り組みは「従業員を大切にする企業」というブランドイメージの醸成にも直結し、優秀な人材の確保にも役立ちます。働き方改革の一環として、ぜひ健康経営への取り組みを進めてみてはいかがでしょうか。