企業の人手不足にどう対応する?取るべき5つの対策を解説
みなさんも多くの企業が人手不足にあるという話は聞いたことがあると思います。その実態や背景についてはご存じでしょうか?「少子高齢化が進み、労働人口が減るから」という理由がまず思い浮かぶ方が多いと思いますが、実際は色々な要因が影響しているようです。本コラムでは、企業が人手不足に陥る背景から企業が今後どのような対策を行っていくべきかを解説します。
目次
- 少子高齢化
- 求人側と求職者のミスマッチ
- 医療・福祉関連
- 運輸関連
- 建築・土木関連
- 飲食などの接客サービス業関連
- 専門・技術職
- 事業継続への影響
- 技術・ノウハウの伝承、能力開発機会の減少
- 人件費の高騰
- 職場環境の悪化
①待遇の見直し
②人材育成の強化
③求人・採用の見直し
④ITの活用
⑤外部委託(アウトソーシング)の活用
人手不足の原因
企業の人手不足は現在どのような状況にあるのでしょうか。厚生労働省、総務省の資料によると、2013年に過剰から不足へ転じたのを境に不足の状態が続いています。特に中小企業における不足が顕著になっています。有効求人倍率も2014年以降1%を超えており、企業における人手不足の状況が続いていることが分かります。では、その原因について考察していきましょう。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」をもとに厚生労働省政策統括官付政策統括室にて作成
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※1
回答企業の人手状況を「過剰」と回答した企業から、「不足」と回答した企業のD.I.を算出。
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※2
グラフのシャドー部分は景気後退期。
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※3
※2の集計対象は、企業規模計。
少子高齢化
原因の一つと考えられるのが少子高齢化です。少子高齢化により、いわゆる生産年齢人口(15~64歳)が1985年以降減少を続けています。経済活動が縮小しない限り絶対的に働き手が不足する状況にあり、企業の人員確保は年々厳しさを増していくことが予想されます。
2015年までは総務省「国勢調査」(年齢不詳人口を含む)、2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」(出生中位・死亡中位推計)
求人側と求職者のミスマッチ
前述の通り全体でみると有効求人倍率が1%を超える状況が続いていますが、産業別に見ていくとばらつきがみられます。その原因として、次のようなことが考えられます。
大手企業志向
求職者に大手企業志向が多いことが指摘されています。大手企業限らず求人は出ているにも関わらず、大手に希望が集まるため偏りが出ている状況です。
技術者不足
専門的な技術が必要な職種については、企業が求めるレベル人材のそもそもの数が少なくの確保が難しいという状況にあります。
働き方の変化
価値観が多様化し、働きやすさを重視する求職者が増えていると言われています。コロナ禍を機に在宅ワークも浸透し今後その傾向は強まると予想されます。いまやフリーランスといわれる働き方をしている人は1500万人を超えると考えられており、労働環境への考え方が変わったことも職業選択に影響を与えている一つの要因と考えられます。
社会の変化
コロナで新しい生活様式が取り入れられるようになりました。特に対面が必要な業務や設備がないと実施できない業務などではコロナによる影響を大きく受けたと言えるでしょう。感染防止のための業務が増えたり、感染による一時的な人手不足も発生しました。
人手不足が発生しやすい業界
医療・福祉関連
少子高齢化が進む中、ニーズは増加の一途をたどっているものの、雇用環境の厳しさなどから就職希望者が増えないという状況にあります。特に介護事業は賃金の低さなども問題となっており、国を挙げて対策が検討されています。
運輸関連
オンラインショッピングが浸透し、急速にニーズが高まっている中、ドライバーの数は減少しています。労働環境の改善を進めている企業もありますが、需要と供給のギャップは大きな課題となっています。
建設・土木関連
雇用が不安定で、拘束時間が長い、休みがとりづらいなどの理由から定着率が低く、慢性的に人手不足の状態にあります。
飲食などの接客サービス業関連
こちらも定着率が低く、人の入れ替わりが激しい産業です。65%を超える企業が人手の不足を感じているというデータもあります。
専門・技術職
企業のDX推進が注目される中、特に情報サービス系の専門職の需要が高まっています。
一方でスキルを備えた人材は少なく人手不足の状況にあります。また、製造業における技術職も、採用難、人材の流動化により人材を育てることが難しくなっており、人手不足が進んでいます。
人手不足がもたらす影響
業界によってばらつきはあるものの、全体的には人手不足が進んでいる状況です。では人手不足は具体的にどのような影響をもたらすのかを見ていきましょう。
事業継続への影響
対応する人手がないため、事業拡大が困難になることが考えられます。また伴って先を見据えての新規事業への取り組みなども行えなくなるため、たとえ一定期間維持できたとしても、いずれは事業縮小、場合によっては倒産という結果を招くことも考えられます。
技術・ノウハウの伝承、能力開発機会の減少
人手不足は事業を支えてきた技術やノウハウの伝承を困難にし、また、新たな技術を取り入れたりスキルを上げることも難しくなり、競争力の維持に影響がでることが予想されます。近年は人材の流動性も高まっており、こういった企業の財産をどのように守り継承していくかが人手不足とあわせて問われています。
人件費の高騰
2022年1月に帝国データバンクが実施した「2022年度の賃金動向に関する企業の意識調査」によると、企業の54.6%で2022年度中に正社員の賃金改善が見込まれる一方、その理由として76.6%の企業で「労働力の定着・確保」をあげています。人手不足の状況は人材を確保するのも維持するのもより多くの費用を必要とします。
職場環境の悪化
人手が足らなくなることは職場に以下のような影響をもたらします。従業員の負担が大きくなることで離職が増え、さらなる負担を強いることになるという悪循環が生じます。
- 残業の増加、休暇取得の減少
- 働きがいや意欲の低下
- 離職の増加
- 無理な採用によるミスマッチ
人手不足解消にむけ企業が取り組むべき5つの対策
① 待遇の見直し
給与、業務効率の改善など労働条件、職場環境の改善を図ること、評価制度改革、働き方改革に取り組むことがこれにあたります。上述の通り、求職者は働きやすさを重視する傾向にあります。無駄や無理がある業務の見直し、不要な出社させないなど従業員が柔軟に働ける体制を整えましょう。なお、近年では副業を認める企業も増えています。隙間時間を活用して副収入を得られるだけでなく、副業でスキルを磨き本業に活かしてもらえるなど企業にとっても良い影響が見込めることもあり今後が注目されます。
② 人材育成の強化
人材育成を通して組織全体でスキルアップを図ることで、人材不足への対応力をあげていくとともに、キャリア展望について従業員としっかり話をすることでエンゲージメントを高めます。人手不足の現場では従業員の働きがいや意欲の低下が起きやすい状態にあります。人手不足で日常業務に追われる中ではなかなか取り組むのが難しい領域ではありますが、離職によるさらなる人手不足を引き起こさないためにはぜひ取り組んでいただきたい対策です。
③ 求人・採用の見直し
労働人口の減少が心配されている昨今ですが、実は労働力人口や就業者数は緩やかに上がってきており、1990年代後半の水準を維持しています。これは女性とシニア世代の就業が増えていることが要因となっています。国の各種施策の後押しもあり女性や高齢者、さらには外国人などが働きやすい環境が整ってきています。今までとは違う幅広い人材に目を向けた求人や採用を検討することも人手不足解消につながるでしょう。
④ ITの活用
業務効率化を図ることで人手不足を補うという方法もあります。その強い味方がITツールです。近年ではRPAやAIなどを活用してより効率的に業務を遂行できるツールが活用されるようになりました。また、SaaS製品のように業務に特化した便利機能をクラウドを経由して手軽に利用できるようになり、安価ながら飛躍的に業務負荷を減らすことも可能になっています。
⑤ 外部委託(アウトソーシング)の活用
リソース問題の解決策の一つとして改めて注目されているのがアウトソーシングです。事業を営む上でバックオフィス業務は欠かせません。人手が不足していても売り上げや利益につながらなくても処理しなければならない業務があります。そういったいわゆるノンコア業務といわれる業務について業務の専門家であるアウトソーシングベンダーに一連の業務を委託することが可能です。採用や教育についても任せられるので、人手不足に左右されず安心してコア業務に専念できます。
まとめ
現在の国内人口の減少状況から労働人口の減少は避けて通れない社会的な課題です。数で補うという対応は結果的に企業と労働者の間のミスマッチを発生させ、負のスパイラルに陥ることに繋がります。
本コラムでは対策として5つ取り組みを取り上げました。まとめると以下のように言えます。
- ITやアウトソーシングの活用により効率化な業務プロセスを構築する
- 働き方改革や人事改革を通して働きやすい環境を整える
- 人材育成を強化しスキルを高めることにより働きがいや意欲向上を図る
効果的な対策を行うことで定着率を高め、魅力ある職場として新しい人材が集まってくる
企業へと変革することが人手不足の根本的な解決に繋がると考えます。どれかが欠けても求める人材を継続的に確保するのは難しくなるでしょう。バランスよく対策を行っていくことが求められます。
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