日本のものづくりの状況や課題
人の想像力を支援するキヤノンのソリューションのビジネストレンド。「日本のものづくりの状況や課題」をご紹介します。
日本のものづくりの力
製造業の国内総生産に占める割合は、18.7%(2014年度)あり、サービス業に次ぐ日本経済を支える大きな産業となっています。
製造業の歴史は米国・欧州、次いで日本が長く、その間さまざまな課題に直面し乗り越えてきました。日本が戦後70年の間に解決してきた環境問題やエネルギー問題のノウハウは、新興国にない大きな優位性と言われています。
産業別GDPの構成比
日本のものづくりの現状と課題
現在、日本の製造業の置かれている立場は厳しい状況です。2002年時点では航空・宇宙産業などで高い競争力を持つ北米に次ぐ2番手でしたが、この10年で国際競争力が低下してきています(下図)。低コストで生産ができる新興国の台頭、デジタル化などにより複雑な製造工程を必要としないものづくりが増加したことなどが要因と言われています。特に、大量生産型でライフサイクルが早い家電など消費者製品の分野で大きな打撃を受けています。機械的な構造を持った製品(事務機械、自動車、工作機械など)は、製造工程が複雑なため、日本の競争力を維持できていますが、これも楽観視できない状況です。複雑なものを現場の力でつくり上げるという強みをどう生かすかが鍵となります。
製造業の国際競争力の推移
国際競争力の分析方法について
本調査では、国際競争力を「収益率(売上高営業利益率)×世界シェア(売上高シェア)×100」と定義。収益率の高さは、製品の機能・品質・価格が世界市場で評価されていることを示し、世界シェアの高さは、その製品がより多くの市場に受け入れられていることを示している。この二つの指標で国際競争力の強さを表すことが可能となる。なお、対象分野は、家電、情報・通信機器、コンピューター、事務機械、電子部品、半導体・液晶製造装置、医療機器、重電・産業機械、建設・農業機械、工作機械、自動車、自動車部品、鉄道・交通、航空・宇宙、造船、プラント・エンジニアリング、サービス・ソフトウエア(ソフトウエア専用メーカーなど機械製造を行っていない企業を除く)の17業種である。
これからのものづくり
製造コストを下げるために人件費の低い海外への移転が進められてきました。しかしその国の人件費が上がるにつれ、次の移転先を検討するという悪循環に陥り、長期的にはコスト削減にならないのでは、という見方もあり、国内への回帰が検討されはじめています。また、日本は今後一層少子高齢化が進み、労働人口の減少が危ぶまれている状況です。このように前提が変わっていくときこそ、抜本的にものづくりの方法を変えていくチャンスです。これからは単なるコスト競争ではなく、付加価値を創造することが必要とされており、労働集約型のビジネスからの転換が求められています。変化する環境の中で製造業が培ってきた強みを生かして新たなものづくりのあり方をつくることがこれからの突破口と言われています。
日本の将来推定人口
業界を取り巻く状況が刻一刻と変化する中、日本の製造業がどのように進化していけるのか、それを支える企業がどのように貢献していけるのか、今それを考えるタイミングに来ています。
取材協力:アイティメディア(株)「MONOist」編集部