未来のエネルギーを科学する - 広島大学が切り拓く持続可能な社会への道


広島大学大学院 先進理工系科学研究科 市川・宮岡研究室では、化石燃料に依存しない社会の実現に向けて、エネルギー変換・貯蔵材料等の研究を行っています。市川教授がセンター長を務めるA-ESG科学技術研究センターで、米国Sigray 社製のX 線吸収分光装置(QuantumLeap-H2000)を導入し、放射光科学研究所(HiSOR)との共同運営で研究活動に活用しています。今回は、その導入経緯と効果についてお伺いしました。
X 線吸収分光法(XAS)は、材料中に含まれる元素の化学状態や局所構造を元素選択的に分析できる手法であり、機能性材料や触媒研究において重要な知見を取得できます。これまで、XAS 測定は放射光施設でのみ高精度に行うことができましたが、本装置の導入により、高頻度かつ柔軟にXAS 分析が可能となりました。広範囲にわたる元素の選択的な分析ができるため、本学の強みであるエネルギー変換材料、超伝導材料、強相関電子系材料、キラル磁性体、機能性酸化物、半導体材料など、物理や化学を含む幅広い分野での材料研究に貢献できます。また、本学の放射光科学研究所(HISOR)では、真空紫外線・軟X 線域での放射光実験施設を活用し、物性物理学の領域で卓越した先導的研究を推進し、国内外の研究者との共同研究を精力的に進めています。本装置の導入により、真空紫外線・軟X 線域から硬X 線域までのX 線吸収分光測定がワンストップで可能になりました。
本装置を活用し、市川・宮岡研究室で実施する水素貯蔵物質、二次電池、水素製造、アンモニアに関わる材料やそれらの反応メカニズムの解明を行うことにより、再生可能エネルギー社会の実現に向けた研究開発を効率的に推進します。加えて、放射光による実験試料の多面的評価手段としての活用も期待されます。
広島大学 大学院 先進理工系科学研究科
A-ESG科学技術研究センター
放射光科学研究所(HiSOR)
自然科学研究支援開発センター
市川 貴之 教授、奥田 太一 教授、宮岡 裕樹 教授