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VUCAの時代で何が変わる?
予測困難な時代に
成果を上げる“営業組織”とは

  • 事業拡大・販路拡大

みなさんは「VUCA(ブーカ)」という言葉をご存じでしょうか。
将来を予測することが困難な状況を表すものとして、最近よく見聞きするようになった言葉です。
私たちは今まさに「VUCA時代」を生きていると言っていいでしょう。
先行き不透明なVUCA時代には、どのようなことが起きるのか。そして企業が営業活動を円滑に進め、成果や業績を上げるためには、どのようなことに取り組めばよいのか。
今回は、VUCA時代を生き抜いていくうえで企業がめざすべき方向性について、詳しく解説します。

企業の営業活動を取り巻く状況

VUCA(ブーカ)時代とは

昨今、よく「先行き不透明な時代だ」ということを耳にします。VUCAとはまさに、予測困難な状況を表す言葉として、以下の4つの英単語の頭文字を取って命名されました。

  • V(Volatility)/変動性
  • U(Uncertainty)/不確実性
  • C(Complexity)/複雑性
  • A(Ambiguity)/曖昧性

もともとは、東西冷戦が終わった後の複雑化した世界情勢を指す軍事用語として生まれたものですが、近年はあらゆる社会情勢を指して使われるようになりました。
これから何が起きるかわからない、不確実なことばかり続く、さまざまなことが複雑に絡み合っている、どうすれば問題を解決できるのか――。そんな不安定要素にあふれた状況が続く現在を指して、VUCA時代と呼びます。

先に挙げたVUCAを構成する4つの要素の詳細は以下のとおりです。

Volatility:変動性

テクノロジーの進化によって新しい商品やサービスが次々に生まれています。それに伴って、マーケットのニーズ、消費者の価値観・行動なども変動しています。

Uncertainty:不確実性

私たちを取り巻く世界は、ますます不確実性を増しています。そんな状況では、事業計画など今後のビジネスの見通しを立てることが難しくなります。

Complexity:複雑性

あらゆる要因が複雑に絡み合い、単純なやり方では解決できない問題が増えています。従来の枠組みを超えた発想や、革新的な手法が求められます。

Ambiguity:曖昧性

もはや正解は一つではなく、課題・問題へのアプローチは多様です。そうした絶対的なものの不在、つまり曖昧な状態に私たちは置かれています。

VUCA時代の到来

VUCAという言葉が広く知られるようになったのは、2016年1月にスイスのダボスで開催された『世界経済フォーラム』(通称:ダボス会議)で、世界がまさに予測困難な状況であるとして「VUCAワールド」という言い方をされたことがきっかけでした。

最近ではビジネスシーンにおいても、「VUCA時代の到来」などと言われます。これまでの成功体験や当たり前だったやり方が通用しなくなり、新たなビジネスモデルへのシフトチェンジが必要であるという場合に使用されています。
生活しかり、経済しかり、現代では私たちを取り巻くあらゆるものが予測困難な様相を呈しています。その背景としては、テクノロジーの進化、地球環境の変化など、さまざまな要因が考えられます。

生活で言えば、新型コロナウイルスの世界的なパンデミック(大流行)、地球温暖化による異常気象、地殻変動による地震など、「まさか」と思うようなことが次々に起きています。
経済で言えば、急速に進んだグローバル化によってビジネスのあり方が変わりました。また、外国の政治情勢などがビジネスに影響を与えることも頻繁に起きています。

VUCA時代における「新常識」

VUCA時代ではこれまでの常識が通用しなくなり、新たなスタンダードが生まれます。いくつか具体例を挙げてみましょう。

  • スマートフォンやSNSが発達したことにより、マーケティング手法が変化
  • 電子マネーや暗号資産の登場により、キャッシュレス決済が加速
  • 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、非対面の配達サービスが誕生
  • 生産年齢人口の減少に伴い、ドローンやAI・ロボットの実用化が加速

こうした事例の中には、テクノロジーが進化したために変わったこともあれば、社会情勢が変化したために工夫したこともあり、変化のきっかけはさまざまです。いずれにせよ、ひと昔前には想像し得なかったことが、今や「新常識」になっています。

営業活動も新たなスタンダードへ

さて、VUCA時代を生きるビジネスパーソンには、どのようなスキルが求められるのでしょうか。

  • 柔軟に適応するスキル
  • 迅速に判断するスキル
  • 状況や情報を理解するスキル

つまり、情報収集にしっかり努め、自分の頭で考え、フレキシブルに時代に対応する。それが先行き不透明な時代には必要になってくるのです。これらのスキルは、営業活動においても例外ではありません。元来、わが国においてはKKD(勘・経験・度胸)といったアナログなものが重視されてきましたが、それだけでは予測困難なVUCA時代には対応しきれなくなっています。

図らずもコロナ禍によって、私たちの働き方は大きく変わりました。この変化は、より効率的かつ合理的に成果・業績を上げるために、どうすればいいのかをあらためて問い直すきっかけになりました。
そこで現在、多くの企業が注目している“営業組織”のあり方が、「分業型営業組織」です。

今、注目を集める「分業型営業組織」とは

分業型営業組織が注目される理由

営業活動と一口に言っても、その業務範囲は、リード(見込み顧客)獲得、提案書の作成、商談・クロージング(契約締結)、アフターフォローなど、広範にわたります。BtoB企業の営業では、こうした営業プロセスのすべてを、同じ営業が担当しているケースが多く見受けられます。

すべてを一人でこなすことが当たり前という考えが、日本社会には根深く浸透しているためでしょう。営業でありながら、マーケティングのような役割も担っているというケースも少なくありません。しかし近年では、こうしたやり方は非効率という考えも徐々に認知されてきました。

もはや終身雇用が「常識」ではなくなり、雇用は流動的であることが「新常識」になりつつある現在、一人の従業員にすべてを委ねてしまうことは大変なリスクでもあります。コストと時間をかけて育成した人材が、すぐに転職してしまう可能性もあるでしょう。つまり、リスクを分散し、安定した企業経営を行うために、多くの企業が分業型営業組織に取り組み始めています。

分業型営業組織のメリット

営業プロセスを分業化することで生産性向上をめざすのが、分業型営業組織です。そのメリットについて、詳しく紹介していきます。

顧客の満足度アップ

これまでは一人の営業が「広く浅く」カバーしてきた業務内容を、複数部門で役割分担することで、「より深く」カバーできるようになります。結果的に、顧客の満足度アップにつながります。

人材育成の時間とコスト削減

例えばリード獲得とクロージングでは、求められるスキルが異なります。すべての営業プロセスに必要なスキルを一人の人間が習得するには、大変な労力とコストがかかります。営業プロセスを分業化することで、人材育成にかかる時間とコストも削減することができます。

組織全体のパフォーマンス向上

特定の業務に集中できる環境を整えることで、個々のパフォーマンスが存分に発揮されるようになり、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。

社内にノウハウが蓄積される

個人から組織単位へと役割を変更することにより、属人化が解消され、社内にノウハウやデータが蓄積されていきます。それをもとに、顧客に対して再現性の高いアプローチが可能になります。

このように、営業プロセスを分業化することは、業務の生産性を高めることはもちろん、組織全体の強化にとっても大きなメリットがあるのです。

分業型営業組織の成功事例

では、実際に営業プロセスの分業化に取り組んだ企業の成功事例を紹介します。

事例1 他部門間における連携を強化

ある電子計測器のメーカーでは、営業の効率化と他部門間における連携を強化するため、営業部門が中心となってCRM(顧客関係管理)を導入し、企画、マーケティング、サービス&サポート、インサイドセールスなどと連携することで、効率化に成功しました。その後さらに、マーケティングオートメーションツールの活用へと取り組みを発展させています。

事例2 商談成約率が2倍にアップ

あるソフトウェア開発の企業では、リード獲得から商談まで、営業がすべてを担当していました。しかし、受注効率の悪さが課題になり、インサイドセールスを導入することにしました。すると、展示会やセミナーを通して得た見込み顧客の情報も、インサイドセールスが営業と連携することでスムーズに活用できるようになりました。その結果、分業化に成功し、新規の商談成約率が2倍にアップしました。

事例3 リードタイムが大幅に短縮

インターネットを活用したサービスを展開する企業では、テレアポや飛び込み営業を主体に行っていましたが、商談成約率の低さが課題になっていました。そこでインサイドセールスを導入。リードに対して、インサイドセールスがオンラインで対応することにより、商談件数を飛躍的に向上させました。
また、それまで1カ月以上かかっていたリードタイム(受注までのプロセス)を、半月近くまで短縮させることにも成功しました。

インサイドセールスとは

先の成功事例で出てきた「インサイドセールス」とは、電話・メール・Web会議システムなどを活用した非対面での営業手法のことです。単にアポイントを取るだけではなく、見込み顧客の育成・関係の醸成(リードナーチャリング)を業務範囲に含めることもあります。

こうしたアプローチは従来、営業自身がカバーすることが往々にしてありましたが、近年は分業化の傾向が見られます。内勤型のインサイドセールスに対し、顧客先を訪問するなどして実際に商談や契約を行う業務はフィールドセールスと呼ばれます。アメリカなどではこのような分業化はすでに主流になっており、わが国でも分業型営業組織を構築するうえで、重要な位置付けとなっています。

分業型営業組織を成功させるポイント

分業型営業組織における注意点と対応策

先の成功事例からもわかるように、分業型営業組織では営業部門が他部門と連携することが欠かせません。これまでは自分さえ把握していればよかったことが、分業化が進んでメンバーが増えるほどに、部門間での情報共有が非常に大事になってくるのです。
そのためにはさまざまなデジタルツールの活用が効果的です。分業によってかえって組織に分断が生じてしまわないよう、またコミュニケーション不足によって業務が滞ってしまわないように注意する必要があります。

では、具体的にどのようなことに気をつければいいのか、分業化に際して実践すべきポイントを紹介します。

営業プロセスの可視化

営業プロセスの可視化は、分業型営業組織を成功させる最大のポイントです。まずは営業部門の業務内容を洗い出すことで、それまで勘や経験などの「暗黙知」に頼ってきた営業プロセスを可視化します。そのうえで何を営業のコア業務とし、それ以外の業務はどの部門、または誰が担当するのかを決めていきます。その後、営業プロセスが誰にとっても理解できるようスムーズに連携または情報共有していくことが重要です。

コミュニケーションの活性化

これまでは他部門のことをあまり知らなくても、自分の仕事にさほど支障はなかったかもしれません。しかし、分業型営業組織では、スムーズな連携と情報共有ができてこそ、業務効率化が図れます。社員同士の情報共有やコミュニケーションを促進する便利なデジタルツールなどを活用し、円滑化を促すとよいでしょう。共有した情報は企業の財産として蓄積し、誰もが活用できる仕組みをつくることも欠かせません。

効果検証のための指標を設定

分業型営業組織は、いわば「ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン」(一人はみんなのために、みんなは一人のために)という関係性を築きながら仕事を進めるやり方です。そこで必要になってくるのが、ビジネスにおけるKGIとKPIの設定です。

全体の目標を設定する

全社一丸となって何をめざすのか、会社には組織を横断した目標が必要です。これをKGI(経営目標達成指標)と言います。例えば「会社の利益を○%アップする」といった具体的な目標を決めておくのです。それがない場合、ゴールが見えず、全体がスムーズに機能しない可能性があります。また、設定したKGIの効果検証を行う方法もあわせて決めておくことをおすすめします。

各部門の目標を設定する

共通の目標が明確になったら、次にその部門として何をめざすのかを決めます。これをKPI(重要業績評価指標)と言います。営業部門なら「○%の成約率を達成する」、リード獲得のためのインサイドセールス部門なら「○件のアポイントを取得する」というように、ゴールに対して自分たちがめざすべきことを明確にしておきます。また、その目標を部門間で共有し、連携できる仕組みや体制の構築もあわせて行いましょう。

PDCAサイクルによる継続的な業務改善

何事もそうですが、分業型営業組織もいきなりスタートからうまくいくとは限りません。しかし、デジタルツールによって情報共有や収集をすることで、データからボトルネック(うまくいっていない箇所や、うまくいかない理由)を明らかにすることができます。このようにPDCAサイクルを回すことで、分業型営業組織をよりよいものへと、精度を高めていくことができます。

ビジネスパーソンにとっては今さらの説明かもしれませんが、PDCAサイクルとは、以下の4つの英単語の頭文字を取って命名されたフレームワークです。

  • P(Plan)/計画

    目標を設定し、具体的にどのように行動するか、計画を立てる。

  • D(Do)/実行

    計画を実行に移し、その効果を測定しながら目標の達成をめざす。

  • C(Check)/評価

    目標・計画と、実際の成果・業績の差を把握し、評価・分析を行う。

  • A(Action)/改善

    課題・問題点に対する改善策や対策を検討し、次の「計画」に反映する。

こうして4つのステップを繰り返すことで、継続的な業務効率化をめざします。

未来へ向けて発展し続ける企業であるために

今回は、くしくもVUCAという4文字の解説から始まり、PDCAという4文字の解説で締めくくることになりましたが、どちらの言葉も誕生したのはアメリカです。
今やアメリカは「ビッグ・テック」を抱えるICT先進国です。彼らはデジタル技術を活用し、よりよいものへとブラッシュアップすることで、先行き不透明な時代をリードしてきました。

また、インサイドセールスを多くの企業が効果的に実践するなど、分業型営業組織づくりにおいても大きく先んじている感があります。「現状維持では後退するばかりである」と言ったのは、世界最大のエンターテインメント企業を築いたウォルト・ディズニーでした。未来へ向けて発展し続ける企業であるためには、変化を恐れていてはいけません。VUCA時代と言われる今だからこそ、新たな一歩を踏み出す必要があるのではないでしょうか。

まとめ

ここまで、VUCA時代とは何か、そして予測困難な時代で成果を上げる分業型営業組織とはどのようなものかを解説してきました。旧来の手法や体制から抜け出すためには、まず営業プロセスを可視化し、見直しを図ることから始めなければなりません。

キヤノンマーケティングジャパンでは、約10年前から営業プロセスを見直し、デジタルの活用を推進してまいりました。近年は、自社実践のノウハウをもとに、BtoB企業のお客さまに対して「マーケティング・営業活動の変革」に関するご支援をしております。
もちろん、どの企業でもコロナ禍や働き方改革への取り組みを契機として、独自の新しい試みを推進されていることでしょう。しかし、現状は現場に浸透していない、本当にこのやり方でよいのかと悩んでいる経営者の方もいらっしゃると思います。キヤノンマーケティングジャパンは、御社にとっての“最適”を見つけるための取り組みをサポートいたします。ぜひ気軽にお問い合わせください。

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