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ヒヤリハット報告書とは?報告書の書き方や例文を介護・医療・建設・製造など業界別に解説

公開日:2026年2月26日

目次

はじめに:事故の“前兆”を捉えられる組織だけが、事故ゼロに近づく

企業の安全管理において、最も費用対効果の高い投資は何でしょうか。
高度なセンサーでしょうか。それとも研修でしょうか。
実は最も大きな効果をもたらすのは、現場で日常的に発生する「ヒヤリ」とした瞬間を、組織全体で共有し、学びに変えることです。
重大事故の背景には、必ず小さな前兆があります。
そして、その前兆を最も早く、最も多く目撃するのは、現場のスタッフです。
しかし多くの現場では、

  • 忙しくて報告まで手が回らない
  • 書くのが面倒
  • 形式がバラバラ
  • 報告しても改善されない

といった理由で、ヒヤリハットは現場で埋もれがちです。
結果、企業は事故の芽を見逃し、
「防げるはずだった事故」に向き合わざるを得ません。
本コラムでは、ヒヤリハット報告書の基本から、書き方、業界別の具体例、そしてデジタル化まで“今日からすぐに現場の安全レベルを底上げできる実践的な知識” をわかりやすく解説します。

ヒヤリハット報告書とは?

ヒヤリハット報告書とは?

ヒヤリハットとは、事故には至らなかったものの、「条件が少し違えば事故になっていた」出来事を指します。
この出来事を記録し、再発防止につなげるのがヒヤリハット報告書です。労働安全分野では、重大事故の背後には多数のヒヤリハットが存在するとされ、ハインリッヒの法則によれば、重大事故1件に対し約300件のヒヤリハットが発生すると言われています。つまり、ヒヤリハットを活用することは、重大事故を未然に防ぐための最も効果的な手段の一つです。

ヒヤリハット報告書は誰が書くのか?

基本的には、ヒヤリハットを目撃した本人(現場スタッフ)が記入します。
ただし、組織としては次のような方針を明確にする必要があります。

  • 「気づいた人が必ず書く」文化をつくる
  • 書きやすいフォーマットや運用方法を整備する
  • 管理者が必ずフィードバックする

現場の書きやすさと、管理側の“改善につながる運用”の両方が重要です。

ヒヤリハット報告書の提出先

一般的には以下のような流れが多くの業界で採用されています。

  • 現場 → 管理者(リーダー、主任) → 安全管理担当者 → 組織内で共有

組織規模によっては、安全委員会で審議し、改善策を決めるケースもあります。

事故報告書とヒヤリハット報告書の違い

項目 ヒヤリハット報告書 事故報告書
状況 事故になりかけた事例 すでに事故が発生した事例
目的 再発防止・兆候の分析 原因究明・責任の明確化
必要性 予防的観点で重要 法的な報告義務が発生することも
組織への効果 重大事故の予防、教育 事故対応、再発防止策の制定

ヒヤリハットは、事故を起こさないための“前倒しの安全投資”です。

ヒヤリハット報告書の書き方とフォーマット

ヒヤリハット報告書は、誰でも同じ品質で書けるフォーマットが重要です。
以下に、実務で使えるシンプルかつ網羅的なテンプレートを示します。

ヒヤリハット報告書テンプレート(フォーマット)

ヒヤリハット報告書
  • 発生日時
  • 発生場所
  • 対象業務
  • 発生状況(何が起こったのか)
  • 背景・要因(なぜ起こりそうになったのか)
  • その場の対応
  • 今後起こり得るリスク
  • 再発防止策(自分の考え)
  • その他(気づき・提案など)

書き方のポイント

(1)「事実」と「推測」を分けて書く
  • 事実:見たこと、起きたこと
  • 推測:原因の仮説、今後のリスク
(2)5W1Hで記述する
  • When:いつ
  • Where:どこで
  • Who:誰が
  • What:何を
  • Why:なぜ
  • How:どのように
(3)再発防止策は“完璧”でなくて良い
現場の気づきに価値があるため、「自分の考え」で十分。

ヒヤリハット報告書の例文集と業界別記入例

ここからはすぐに使えるリアルな例文を介護施設、医療施設、建設業、製造業、食品製造業を例に紹介します。
自社の改善にご活用ください。

介護施設の記入例

所属 介護部 2階フロア
氏名 観音太郎
発生日時 2026年1月10日 10時15分頃
発生場所 2階 居室前廊下
対象業務 入居者移動介助
発生状況 歩行介助中、入居者が床に落ちていたタオルに足を引っ掛け、転倒しそうになった。幸い支えたため転倒には至らなかった。
作業環境の問題 清掃後のタオルが廊下に一時的に置かれていた。
設備環境の問題 特になし。
作業方法の問題 移動前の通路確認が不十分だった。
人の問題 清掃担当と介護職員間で、清掃完了の共有がされていなかった。
それ以外の問題 なし。
その他(提案・気づき) 清掃中・清掃後は物品を通路に置かないルールを明確化する。
管理者記入欄 通路確認を介助前チェック項目に追加。清掃時間帯の情報共有を徹底する。

医療施設の記入例

所属 外来部 看護課
氏名 観音太郎
発生日時 2026年1月8日 14時40分頃
発生場所 処置室
対象業務 点滴準備作業
発生状況 点滴薬を準備中、類似したラベルの薬剤を取り違えそうになったが、投与前の確認で気づいた。
作業環境の問題 処置室が混雑しており、作業スペースが狭かった。
設備環境の問題 薬剤保管棚の表示が分かりにくい。
作業方法の問題 一時的に複数患者分の薬剤を同時に準備していた。
人の問題 業務が立て込んでおり、焦りがあった。
それ以外の問題 なし。
その他(提案・気づき) 薬剤準備は原則1人分ずつ行い、ラベル表示の色分けを検討する。
管理者記入欄 薬剤管理方法の見直しを実施。ダブルチェック手順を再周知。

建設業の記入例

所属 外装工事班
氏名 観音太郎
発生日時 2026年1月6日 11時20分頃
発生場所 3階 足場作業エリア
対象業務 外装材取り付け作業
発生状況 足場上で工具を移動中、手元が滑り工具を落としそうになった。
作業環境の問題 前日の雨で足場床面が濡れていた。
設備環境の問題 足場床に滑り止め対策が不十分だった。
作業方法の問題 工具を一時的に床に置いていた。
人の問題 安全確認が不十分だった。
それ以外の問題 なし。
その他(提案・気づき) 雨天後は必ず滑り止めシートを設置し、工具は腰袋に収納する。
管理者記入欄 雨天後作業の安全手順を見直し、KY活動時に必ず共有する。

製造業の記入例

所属 製造部 第1ライン
氏名 観音太郎
発生日時 2026年1月9日 9時05分頃
発生場所 組立ライン
対象業務 部品組付け作業
発生状況 部品供給中、指が治具に挟まりそうになった。
作業環境の問題 作業スペースが狭く、動線が確保されていなかった。
設備環境の問題 治具の可動部に注意喚起表示がなかった。
作業方法の問題 作業速度を優先し、手順を省略していた。
人の問題 慣れによる油断があった。
それ以外の問題 なし。
その他(提案・気づき) 治具に注意表示を追加し、作業スピードより安全を優先する。
管理者記入欄 治具改修を検討。安全教育を再実施する。

食品製造業の記入例

所属 製造部 調理ライン
氏名 観音太郎
発生日時 2026年1月11日 7時50分頃
発生場所 原料下処理室
対象業務 食材カット作業
発生状況 床に落ちていた水で足を滑らせ、包丁を落としそうになった。
作業環境の問題 床が濡れており、十分に拭き取られていなかった。
設備環境の問題 滑り止めマットの設置範囲が不十分だった。
作業方法の問題 作業中断時の床確認が行われていなかった。
人の問題 周囲への注意喚起が不足していた。
それ以外の問題 なし。
その他(提案・気づき) 定期的な床確認と、滑り止めマットの追加設置が必要。
管理者記入欄 清掃・点検頻度を見直し、安全確認手順を標準化する。

ヒヤリハット報告書をデジタル化

ヒヤリハット報告書をデジタル化する重要性とメリット

ヒヤリハット報告は、量が質を生む活動です。
現場から上がる報告件数が、10件から100件に増えるだけで、組織の危険予測力は飛躍的に向上します。
しかし、紙ベースの運用には次のような課題があります。

  • 手書きが面倒で報告が滞る
  • 提出が遅れ、情報共有が遅延
  • 管理者がリアルタイムで確認できない
  • データ分析が困難
  • 累積的な改善につながらない

これらを一気に解決するのが、ヒヤリハット報告のデジタル化です。

デジタル化のメリット
  • スマホやタブレットから簡単に入力できるようになる
  • 管理者がリアルタイムで状況を確認できるようになる
  • 写真や動画を添付して、現場の状況を正確に共有できるようになる
  • データの蓄積により、傾向を分析できるようになる
  • 組織全体の安全レベルを継続的に向上できるようになる

現場書類デジタル化パックの概要

現場向けに特化した「現場書類デジタル化パック」では、ヒヤリハット報告を含む以下の機能を提供します。

  • スマホ・タブレットでの現場報告
  • 写真や動画の添付
  • フォーマットの統一
  • 組織全体の傾向分析
  • 現場の業務効率化

紙の手間をなくし、「気づいた瞬間に報告できる」環境を整えることで、安全管理の質を根本から変えることができます。

まとめ:ヒヤリハットの共有は、組織の未来を守る“投資”

ヒヤリハット報告は、単なる書類業務ではありません。
企業の事故ゼロ文化を築くための、最も重要な安全マネジメント活動です。

  • 現場の気づきが集まる
  • 組織が学習する
  • 改善が加速する
  • 安全レベルが上がる
  • 離職防止・ブランド価値向上につながる

小さな“ヒヤリ”を大切にする組織は、重大事故のない、強い現場を作り上げることができます。

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