ひとの輝きを、残したい。日本の新しい写真館

人の輝きを、残したい。

もとまつ写真場 福岡県福岡市

写真は、ただ一瞬を残すだけのものではない。人の喜びや悲しみ、いくつもの物語を焼き付けてくれる。その一枚によって、家族は想いを共有し、また絆を深めていく。そうした写真の力を信じているからこそ、その素晴らしさをもっと伝えていきたいと考える重岡冨美雄氏に話を伺った。

家族写真なら「もとまつ」に行け。

重岡冨美雄氏が2代目として、もとまつ写真場を継いだのが1985年のこと。当時は学校写真が中心で売上の9割を占めていたそうだ。「その頃、僕らがここに存在する意義は何かとあらためて考えた。それはやはり地域の方々に、うちのスタジオで撮影の楽しさを知ってもらいながら、家族の絆や繋がりを認識していただくことじゃないかと考えたんです。“家族写真を撮るんだったら、もとまつに行け”、そう言われるような、まさに家族写真の専門店になろう。その想いが、いまの店づくりの原点ですね」と重岡氏は語る。

豊かな人生を歩んできた「今」だから残せる写真を。

家族写真の専門店を志向するなかで、重岡氏がかねてから違和感を感じていたのが遺影写真だ。人生最後のセレモニーで使用する写真にもかかわらず、集合写真を引き伸したピンぼけだったり、着せ替えだったり。そういう写真を見るたびに「街の写真館はポートレートのプロなのに、何故そこで撮る習慣がないのだろう」と疑問に思い、自店のメニューに加えることにしたそうだ。重岡氏が考える理想的な遺影写真は、その人が本当に自分らしく、人生のなかで最も輝いている姿をとらえた写真だ。だから、お客さまにいつも、遺影写真は一度撮ったら終わりのものではないとお話するそうだ。「歳月を経た今だからこその輝きがある。だから何度でも撮っていいと思うんです。例えば女性のお客さまだったら、新しいお洋服を買われたときなどに、また気軽に撮りにきてくださいと声をかけています」と重岡氏は語る。

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遺影写真という文化を定着させるために、その意義を丁寧に伝えていく。

「終活」がマスコミなどで取り上げられることが多くなり、遺影写真に対する抵抗感も低くなりつつある。こうした時期だからこそ、遺影写真の意義を「言葉」にしてしっかりと伝えていかなければならない。重岡氏はそう考え、3年前に遺影写真専用のウェブサイトを立ち上げている。「業界としては、これを一時の流行りにしてはいけない。ゆっくりでもいいから確実に浸透させていく。そのため、お客さまに“遺影写真って大事なんですよ”ということをお伝えしていこうと考えて専用サイトをつくったんです」。専用サイトには、生前に撮るメリットやどんな服装がいいかなど、かなりきめ細かく紹介されている。サイトを立ち上げる以前は遺影写真のお客さまは年に一人か二人ぐらいだったが、立ち上げてからの2012年、2013年は、ともに年に24〜25件に増えているという。また、重岡氏が現在、副委員長を務める九州写真師会連盟では、2011年から「元気なおじいちゃん・おばあちゃんのオシャレな写真展」を年に一回開催している。これはイベント開催地のお年寄りをモデルとして募集。イベント当日に撮影会をおこない、その日のうちにプリントし、翌日から1週間写真展を開催するというもので、毎年好評を得ているそうだ。普段、写真を撮る機会の少ないお年寄りに対しては、こうした啓蒙活動を通じて、写真を撮ることの楽しさを伝えていくことも重要なのだろう。

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もとまつ写真場の遺影写真専用サイト
https://www.motomatsu.ne.jp/iei/

「仲良しご近所同士で、楽しく遺影写真撮影会をしました」(重岡氏)
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厳しい環境で、生き残っていく方法。

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もとまつ写真場の競合環境は厳しい。徒歩で5分のところに2軒の子供写真館、車で10分圏内に大手写真館と子供写真館が3軒ある。他県の写真館の方が、そうした環境で営業を続けていることを知ると「何か特別なことをしているのか?」と聞かれるそうだ。それに対する重岡さんの答えは「いや、別に何もしていない」だ。ただし、つねに心がけているのは、撮影の件数、枚数を増やすことより、一人ひとりのお客さまを大切に撮っていくこと。「例えば七五三。小さなお子さんは機嫌が悪いと、いい表情が出ないことがある。そんなときは、良くなるまで時間をかける。一生懸命、汗をかいて、いい写真を撮る努力を続ける。そういう姿勢で撮影していると、お客さまも納得してくれるんです」と重岡氏。着付けやヘアメイクにも非常にこだわっている。「成人式も七五三も、着付け、ヘアメイクは家内と娘が担当していますが、その仕事も丁寧に行うように心がけています。写真として長く残っていくものを僕らは創っている。だから、撮影の前の段階も疎かにしてはいけないと思っているんです。実際、着付けやヘアメイクの評判を聞きつけて、うちを選んでいただいているお客さまも多いんです」。街の写真館として残っていくために“効率が悪くても、満足を一つひとつ積み重ねていくことを重視する”、それが重岡氏の考え方だ。

新しい世代に家族写真をひろげていきたい。
フリーペーパーとコラボレーション。

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普段着の家族写真は、七五三、成人式といった記念写真に比べ、動機付けが難しい。それは、どの写真館も同じように感じていることではないか。「家族写真なら、もとまつ」を浸透させるため、同社では地域の子育て世代を対象としたフリーペーパー「リトル・ママ」と提携して撮影会イベントを行っている。「リトル・ママ表紙オーディション」というもので、応募された家族をもとまつ写真場が撮影。グランプリは雑誌の表紙に、その他の家族の写真もリトル・ママホームページに掲載される。さらに同社では、掲載された家族すべてに写真を大きくプリントしてお送りしているそうだ。「不定期のイベントなので、これが直接、来店につながっているかというと、それはまだあまりないですね。ただ、つねに新しい世代には、家族写真の楽しさを伝えていかなければ。種まきと考えて取り組んでいます」と重岡氏。

プリントにこだわる。品質にこだわる。

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同店ではお客さまからのご希望があればデータCDをお渡ししている。だが重岡氏はあくまでもペーパーメディアにこだわっている。「紙で焼いた写真が一番残ると僕は思ってます、最後まで。なおかつ、一番人間的な部分が出る。手にとって“ほらっ”と言うとみんなが顔を寄せてくる。その感覚を残したいなと思っているんです」と重岡氏は語る。プリントは基本的にラボを利用されているが、キヤノンのインクジェットプリンターPIXUS PRO-1も活用している。「お客さまに特急でお渡ししなければいけない場合などに使っています。どんなときでも出力の品質にはこだわりたいですから。それがPRO-1を選んだ理由ですね」。

1階応接スペースには、「家族写真の専門店」らしくお客さまの様々な写真をにぎやかにディスプレイ。

1階応接スペースには、「家族写真の専門店」らしくお客さまの様々な写真をにぎやかにディスプレイ。

2階スタジオ。お客さまの高齢化に対応、バリアフリーを進めるため、スタジオのリニューアルを現在検討中。

2階スタジオ。お客さまの高齢化に対応、バリアフリーを進めるため、スタジオのリニューアルを現在検討中。

写真:もとまつ写真場

もとまつ写真場
1948年、福岡市藤崎にて創業。1987年、現在地にスタジオを新築し、現在に至る。「家族写真の専門店」をコンセプトに、地域のお客さまに自慢していただける写真館をめざしている。
URL:https://www.motomatsu.ne.jp/index.html
(もとまつ写真場のサイトへ)

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