僕のムービーで、この町を元気にしたい。日本の新しい写真館
ギンザフォトスタジオ 愛媛県大洲市
「ギンザフォトスタジオは、この長浜の町の、ただひとつの写真館なんです。だから、もっともっと身近な写真館となることで、この町の皆さんと喜びを共有できたらいいなと思っています」。写真とムービーの総合スタジオを目指して、スタッフとともに日々奮闘する青野祠瑠氏に話を伺った。
町の人々に愛される気軽な写真館へ。
青野氏が3代目として、ギンザフォトスタジオを引き継いだのが約10年前。「当時は出張撮影を中心としていたため、お店は事務所化。いつも閉まっているような状態だったんです。地域の人々から愛され、頼りにされる写真館になるためには、いつでも気軽に立ち寄れるような身近な存在にならなければと考えるようになった。それで現在のようなカジュアルなスタジオづくりに取り組み始めたんです」と語る。また、地域との交流を大切にする青野氏は、商店街のイベントにもフォトグラファーとして積極的に参画する。イベントの様子をEOSムービーで撮影し、広く発信することで、地域の活性化に貢献したいと考えているのだ。
写真のように動画を撮りたい。ずっと、そう考えていた。
以前からブライダルでビデオ撮影を行っていた青野氏は、動画にも一眼レフカメラならではの表現を持ち込めないかと試行錯誤していたそうだ。「エンドロールは記録的なものじゃなくて、感性が出るようなものを目指して撮影していたんですが、なかなか思うようにいかなかった。でもEOSムービーを使ったら、まさに写真のようなイメージで動画を撮影することができまして。初めて会場で流したときに、普段からエンドロールをよく見てる司会者やスタッフの人たちが“なんか今日はちがうね!”と言っていただいたので、その時は“よしっ!”と思いましたね。で、それからはもう、EOSムービーを使って撮影しています」。
なにも考えない。心が動く瞬間を撮るだけ。
動画を撮る時のコツを聞いてみると「僕は基本的にあまり何も考えてないんですね。笑顔だったり、面白い表情だったり。その時間、その空間で、あっ!と感じた瞬間を撮っていく。写真と同じですね」と青野氏は言う。動画用の機材は、三脚や一脚、スライダーを活用するが、カメラにつけるのは音声マイクのみ。「スナップ写真を撮るように、あっ!と思ったらパッと動画のボタンを押せるように。あまり付属品は付けないようにしています」。動画を始めたばかりの方からは素材としてどのくらい撮っておくかということをよく聞かれるという。「編集のしやすさを考えて、ワンシーンワンシーン、少なくとも5秒間はそのまま止まって、その枠の中で起きることを撮りましょう」とアドバイスしているそうだ。
単焦点レンズ85mmの空気感が好きだ。
動画を撮影する際は、24-105mmのズームレンズ、50mm、85mm、100mmの単焦点レンズを使用している。「動画の場合はずっと流れているものなので、縦のブレがあるとすごく違和感があるんですね。だからズームレンズは手ブレ補正機構がついたものを選んで使っています」と青野氏。単焦点レンズは特に85mmを使った表現が好きだという。「ブライダルで撮影させていただく会場は、昔のゴシック建築をベースにしたもので、すごく暗いんですね。ステンドグラスを通しての外の光とか小さなろうそくの光しかない。でも85mmの単焦点だったら、そのくらいの光も取り込みながら、その場の独特の空気感を捉えてくれる。ムービーの中にも空気感が素直に出てくるんです。ビデオカメラで苦労していたのが嘘みたいですね」。
家族といっしょに思い出を作っていく感覚。
ギンザフォトスタジオには、1ポーズでいくら、という概念はない。「せっかく写真館に来ていただいたのに、1ポーズ、2ポーズ撮って終わりという形にしたくないんです。例えば、家族で遊園地に行ったら、そこで起きるいろいろな出来事を楽しむことで、絆を深めたり、思い出を作っていくじゃないですか。写真館をそういう場にしたい。だからうちでは撮影時間を大切にしています。一組に対して必ず1時間とり、その中でお客さまと僕らがコラボし、イメージやアイデアを膨らませながら思い出を作っていくという感覚で撮影しています」。家族のなにげない日常の中にある喜びを撮っていきたいという青野氏の想いには、娘さんの誕生も影響しているという。「2年半前に娘が生まれたのですが、体重587gの超未熟児だったんですね。担当の医師からは、一時間、一日と生きていることを大切に見守ってくださいと言われました。ただ彼女を信じて見守ることしかできなかった僕は、半年後に退院するまでのほぼ毎日、その成長の姿を写真と映像で残していった。そうした日々を通じて、僕自身の役割が見えてきたんです」。家族の愛情を撮り、未来へ送る。それがギンザフォトスタジオの使命と考えている。
あったかくて、かわいい。手作りのカジュアルなお店。
店内に入ると、まるで雑貨屋さんのように小さな写真がいくつも飾られている。どれもが家族の愛情にあふれた写真で、思わず手にとってみたくなる。「写真館らしくない写真館にしたい。かしこまってスーツを着ていくような写真館もいいですけど、うちは日常をテーマにしているので、いつでも気軽に入れる親しみやすい雰囲気にしたかったんです」。白を基調としたディスプレイは手作りの風合いを大切しており、青野氏が作られたところも多いという。 「お客さんの子どもたちからは“親戚の写真の上手いおっちゃんのとこに遊びにいく”ぐらいに思ってもらえたらいい。お父さん、お母さんとは“友達”のような関係になって、一緒に成長を見守り、喜びを分かち合えたらいいですね」。
「写真&ムービー」を印象づける65インチの大画面テレビ。
2階のスタジオに上がっていくと最初に目に飛び込んでくるのが、65インチの大画面テレビだ。「よく大きな水槽があったりすると、子どもたちってそれだけで覚えてくれるじゃないですか。そんな感じで目に見える特徴をつくりたかったのと、うちは“写真と映像をやっている”ことをアピールしたかった。だから、中途半端なサイズじゃなく、“なんでこんなに大きいの!”と思われるくらいのものにしようと考えたんです」と青野氏。リピーターのお客さまが来店された場合は、前回に撮影したときのデータを映してお迎えするそうだ。
月に1回、ワンコイン撮影会。
ギンザフォトスタジオでは地元商店街のフリーマーケットイベントが行われる毎月第3土曜日に「ワンコイン撮影会」を開催している。「地域の人といっしょに何かしたいという思いがあり2年ほど前から始めました。撮影・2Lプリント付きで500円。収益金はすべて震災の義援金という形で使わせてもらっています。少しでも継続して応援できればと考えています」。リピーターも多いというこのワンコイン撮影会、青野氏自身は撮影しないという。「若いスタッフが撮影するようにしています。場数を踏めますし、限られた時間の中で、お客さまと話しながら撮影を進行していくというのは、すごくいい経験になっていると思います」と青野氏は語る。愛される写真館である前に、愛される一人の人間でいたい。ギンザフォトスタジオのスタッフは皆、そうした意識をもって日々過ごしているという。青野氏のあたたかな写真館づくりは、スタッフと町の人々といっしょにこれからも動いていく。
店頭のスタンドには、手描きのメッセージやイラスト、前回撮影時の写真を貼ってお客さまをお出迎え。
2階のスタジオへ上がる階段スペースには、ブライダルのウェルカムボードを展示。「海に近い写真館みたいなイメージにしたくて、階段は青にしたんです」と青野氏。
家族写真では、まだムービーは浸透していない。そこで、あらかじめ3つの商品パッケージを用意し、一番上のグレードを動画入りという内容にしている(アルバム10p+データCD30カット+ムービー入りスライドショーのセット商品が65,000円[撮影料別途])。事前の打ち合わせでおすすめしやすく、またお客さまにとっても動画の有無が選びやすくなっている。
ギンザフォトスタジオ
ギンザフォトスタジオは、現在社員数4名、契約ビデオカメラマン1名という陣容で、ブライダルフォト&ムービー、一般記念撮影、カジュアルフォト撮影、イベント映像撮影を行っている。EOSムービーなどを活用し、写真と映像のハイブリッドスタイルを追求している。
URL:http://www.gps-ehime.com/
(ギンザフォトスタジオのサイトへ)