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営業組織の課題である属人化とバイアスを取り除く方法とは?

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ワンマーケティング株式会社 代表取締役 垣内 良太氏に「営業組織のDX推進」をテーマに語っていただく企画の第2弾。

第1回目「BtoB営業にDX推進が必要な背景と取り巻く環境とは?」では、「企業が取り巻く環境」と「DX推進が必要な背景」について取り上げました。今回は、DXを推進するSaaSを導入する際のポイントや、導入後に課題となるシステムのサイロ化、そして、営業手法の属人化をデジタル化でどのように解決できるのか、についてお話をうかがいました。

業務効率化などの目的でSaaSを導入している企業は多く存在します。しかし、それは部門最適化になっていないでしょうか? 「導入する前からがDX推進のスタート」と垣内氏は警鐘を鳴らします。



第1回目では、BtoB営業を取り巻く環境や課題について語っていただきました。その際に“システムのサイロ化”という話が出ました。

垣内氏(※以下、敬称略)「SFAやCRM、MAには当然ながらツール毎にコンセプトや思想があるはずですが、どうしても選定の際に機能に固執しがちなんですね。
特に多くのSFAは、自分たち仕様で構築できるものが多い。しかも、クラウドで。しかし、本来のコンセプトに沿ったものではなく、クラウドだからという理由で採用している企業も多い。結果、従来のシステムがクラウドになっただけみたいな。
デジタル化を推進するにも“思想”がないままに、単に従来の焼きうつしでは変革が起こるはずもありません」

“思想”とは具体的にどういうことでしょう?

垣内「SaaSを選定する際には、機能というよりもその思想に共感できるかどうかがもっとも重要だと思います。つまり、AとBというツールの機能を比較するのではなく、ツールの思想に乗っかり、組織をデザインしていかないと変革は起きません。ただツールを導入したから、デジタル化というのは間違った考えです」

これから組織をどう変えていきたいか、の視点でサービスを選ぶということですね。

垣内「そういう選び方をしないと、“システムのサイロ化”が起きます。いちばん多くあるケースでは、SFAとMAはつながっているけど、基幹システムは連携していない。これはまだマシな方で、名刺管理ツールとメール配信、SFAも会計システムも基幹システムもそれぞれがバラバラで稼働しているような状態」

組織とサービスのイメージ

それぞれの部門がそのときどきで必要なツールを導入してしまっているということですね。

垣内「それぞれのツールに役割はあるので、もちろんそれでも機能します。しかし、ツール同士を連携させて相乗効果を得るという視点が抜けている。たとえば、A社という顧客がいた場合、その登録情報がツールによってバラついている。ツール同士のリレーションがない。これがシステムのサイロ化ですね」

DX推進に必要なのは思想。思想を誰がデザインするか?

システムがバラバラだと営業とマーケティングも連携できないですね。

垣内さま写真

垣内「その通りですね。よくある例では、Webサイトの問い合わせフォームです。問い合わせフォームにメールが来ると、それぞれの担当部署に振り分けられます。メールアドレスがデータベース化されていればいいのですが、多くのケースでは、メーラーで管理している。BtoB営業ですと、問い合わせをメールで受け付けていると、その見込み客が問い合わせをしたのはわかりますが、過去に展示会に来ていたかもしれないし、営業がすでにタッチをしていたかもしれない」

なるほど。営業と販売、マーケティングの連携がされていないと見込み客の確度が把握しにくい。

垣内「データベースで一元管理をしないといけないし、顧客の視点に立てているか? というのは、ここがポイントですね。人と人との接点は少なくなっていますが、チャネルは複雑化しています。デジタルとひとくちに言っても、コーポレートサイト、オウンドメディア、広告、メール、今後はBtoBの世界にもSNS等と接点はますます広がりつつある。さらにBtoBでは、展示会やセミナーなどのオフラインでの接点もあります。顧客もオンラインとオフラインの両方で情報収集をしています。顧客がどういう経緯を辿ったかを管理できるかどうかで、アプローチにも大きな差が生まれます」

では、このような思想やコンセプトは誰が、どのように描くべきでしょうか?

垣内「やはり経営陣ですね」

デジタルの知見がないと厳しいのではないでしょうか。

垣内「思想やコンセプトにデジタルの知識はさほど必要ないと思います。プロダクトアウトで、自社の商品をどう売るかという発想ではなく、お客さんが自社の商品をどう思っているのか、何に価値を感じて購入しているのか、どういう接点があり、それをいかに管理するのかというマーケティング思考が必要になる。常に顧客視点で自社を考えていくと、システムのコンセプトも見えてくるはずです」

DX最大のメリットは「感覚的な営業から科学する営業」への変化

デジタルツール、ITシステムの選定に思想やコンセプトが必要だということは理解できました。そのうえで、データベースの一元化が可能になると、いよいよ営業のDXがスタートしたと言えるでしょうか?

垣内「営業組織に根強く残る代表的な弊害が、属人化とバイアスです。このバイアスを取り除くのは至難の技です。営業が強ければ強いほど、バイアスも強くなります。できる営業は過去の成功体験に引っ張られていくんですね。独自の勝ち筋を持っている方が多い。結局、デジタル化してデータベースを一元化し、データを蓄積していっても、活用されないこともままあります。組織を変える力、チェンジマネジメントが必要になってきます」

バイアスを取り除く有効な手段はありますか?

垣内「ひとつはやはり経営トップから明確に指示を出すことですね。営業プロセスにルールをつくり、それを徹底させることです。
デジタル化することで、見込み客の状態や行動を把握できるようになります。たとえば、Webから問い合わせがあり、セミナーにも来てくれた見込み客には、この営業資料で提案するとか。ケースに応じて、営業プロセスとアクションをルール化する。それと同時に“デジタルの信頼性”を高めていかなければなりません。少しずつ成功体験を積み上げていって、属人的な手法よりデジタル活用の方が、効率の良いことを社内に浸透させていく必要があります」

感覚営業と科学営業イメージ

その積み重ねで属人化から平準化が可能になりますね。

垣内「デジタル化の最大のメリットは、“感覚的な営業から科学的な営業に変われる”ことです。営業プロセスにより勝率が高いルールやアクションを組み合わせていき、徹底していく。そうすることで営業組織全体の強化にもつながりますし、継続的な売上も実現できるようになります。BtoB営業のDXのスタート地点は、組織がデジタル化にフィットしたときと言えるのではないでしょうか」

本日は、ありがとうございました。次回は、より実践的なマーケティングオートメーションの活用例をおうかがいします。

(本コンテンツは、2020年1月のインタビューを元に作成しています。)

今回は、BtoB営業にDXが必要な理由とその課題についてお聞きしました。次回は、システムのサイロ化も含め、より深く法人営業部の課題をお聞きします。

垣内 良太氏

ワンマーケティング株式会社 代表取締役

  • 2002年より大阪にある実父が起業した印刷会社に入社。印刷をベースに展示会やWEBなど販促支援に従事。
  • 2010年より、BtoB企業にもマーケティングの重要性を感じ、BtoB企業に特化したマーケティングサービスの提供を開始。
  • 2018年1月に同社の代表取締役に就任。BtoB企業の顧客創造に貢献するためのマーケティングコンサルタントとして西へ東へ奔走中。


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