■期間
2006年9月2日(土)~ 10月2日(月)
10時~17時30分(休館:日曜日・祝日)
入場無料
■会場
キヤノン S タワー1階 キヤノンギャラリー S
(JR品川駅港南口より徒歩約8分、京浜急行品川駅より徒歩約10分)
■ご案内
本展は、写真家の十文字美信氏が「本貌(ほんのかお)」と「ふたたび翳(かげ)」というふたつのテーマに沿って撮影した作品展です。
「本貌」のコンセプトは、ファインダー越しに被写体としての本と向かい合い、対話を試みるというもの。書籍はそれぞれに、その本の顔とも言える固有の装丁を備えています。表紙だけでなく、紙の質感や
ページ数、文字のサイズや間隔に至るまで、本を構成するあらゆる要素が独自性を主張しています。十文字氏の写真はその個性豊かな表情に着目し、ポートレートを撮るように本を風景の中に溶け込ませることで、本がその内で語ろうとしている物語を表現しています。
「ふたたび翳」は、本の中に出てくるワンシーンのような象徴的な風景を日常生活から切り出すことを主題にしています。普段何気なく見ている風景や事象でも、写真にしてみるとその背後に隠された意味がにわかに浮上してきます。花びらの尖端、立ち上がる影、深淵へと消えていく魚など、活字によって喚起された十文字氏独自の視覚的イメージは、多義的な解釈を可能とする日常の裏側の存在を示唆しています。
なお、すべての展示作品の出力には、キヤノンの大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF」を使用しました。
■十文字美信氏メッセージ
本を読むことによって浮かんでくるイメージは、心の深い層につながっている。見えないけれど、夢と同じくらいヴィジュアル的だ。写真に撮ってみようと思った。
本展構成は、大きくふたつに分かれる。ひとつは、私自身が刺激された本そのものを被写体にした。他は、本に印刷された文字に導かれて日常に存在する異界への入り口を見つけ出す。撮られた映像から、不可思議な瞬間を共有できたらうれしい。
■プロフィール
十文字美信(じゅうもんじ びしん)
1947年横浜生まれ。71年に写真家としてデビューする。処女作品「Untitled」が74年ニューヨーク近代美術館主催「New Japanese Photography」展に招待される。90年にはボストン美術館主催
「Courtly Splendor(日本の王朝美術)」に出品。80年「蘭の舟」で伊奈信男賞、91年「黄金 風天人」で土門拳賞を受賞。上記のほか、主な作品集に『澄み透った闇』(春秋社 1987年)、『桂離宮』(新潮社 1993年)、『十文字美信の仕事と周辺』(六耀社 2000年)、『わび』(淡交社 2002年)などがある。