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ネイルアートは自由だ! ネイルとカルチャーのボーダレスな遊び方。

公開日:2022年8月25日

最終更新日:2022年9月2日

Photo : Tsume wo nuru hito

「映画や音楽は作品の数だけ感情がある」。そう話す爪作家の「つめをぬるひと」さんは、ネイルもさることながら大のカルチャー好き。作品を鑑賞したり視聴したりするときに心に浮かぶ心象風景をネイルに描き留め、「退屈をありがとう」、「真面目」、「役立つ棘」、「生半可」、「吐いたら祝福」、「謙遜」などさまざまなタイトルをつけて、言葉になりきらない感情にゆるやかな輪郭を与えています。そんな彼女にとってのネイルとはまさに「人生を変えたもの」「自分に自信をつけてくれたもの」。さらには「大好きなものを自分の人生に引き寄せてくれたもの」。さまざまな気持ちでもって向き合うネイルに思うこと、そして、そのアイデアをセルフネイルなどで活かす方法について教えていただきました。

PROFILE

つめをぬるひと

爪作家。「身につけるためであり 身につけるためでない 気張らない爪」というコンセプトで爪にも部屋にも飾れるつけ爪を制作する。

ネイルは自由だ!

「つめをぬるひと」の活動は、自宅に数本あったネイルを塗ったことからはじまりました。それがなんだかとても楽しくて。イラストが得意なわけではないので凝ったものは描けませんが、丸や線などシンプルなかたちを組み合わせただけのネイルがもっとあったらいいのに、と思っていました。爪は体の部位の中で唯一手軽に書き換えができて、日常的に目視できる部位でもあります。その部位が自分の好きな色になっていて、ふとした瞬間に視界に入ってくる。それがいいですよね。

お風呂に入っている時、すべてを脱ぎ去って、何も身につけていない状態でも、爪が好きな色になっているだけで無敵な気持ちになります。カフェで買ったドリンクを持ち歩いている時も、スマホを触っている時も、日常の中で爪が視界に入るだけで気分は変わります。

今でもそうなのですが、私はかわいいネイルだけを作りたいわけではありません。かわいさや綺麗さだけではなくて、疑問やウザさ、怠惰など、可愛くない感情も爪にしたいと思っています。それは爪を塗り始めるよりも長い間好きである音楽や映画と関連するのかもしれません。音楽や映画には作品の数だけ感情があるので、爪にもそういった感情の数だけデザインがあってもいいと思っています。

「生半可」「真綿」「盗っ人猛々しい」「杓子定規」「蹴り」「対峙」……。すべて、ネイル作品のタイトルです。

あまり説明過多にならないように、使う人の置かれている状況や人間関係などによって、なにか思い出すものがあればと思って名付けています。

ネイルがつなげる、カルチャー愛

さきほど音楽や映画が好きだとお話ししましたが、大好きなアーティストのCDジャケットを描いて本人に見せたこともあるんです。

それは2014年の夏フェスでのこと。Metronomyというアーティストのサイン会があるということで、アルバム『The English Riviera』のビジュアルを描いて本人に見せたら喜んでくれて。「Your nails are amazing!」というメッセージをサインに添えてくださったことがとても嬉しかったです。それがきっかけでCDジャケットを爪に描くようになりましたし、今でも活動の原動力になっています。

音楽に限らず、今では映画に関する連載を執筆させていただいています。映画を観た直後の余韻でつけ爪を作り、文章と爪の写真で記事を作っています。映画も音楽もそうですが、そういったカルチャーがまさかの「爪」を経由して誰かに共有できている状態が面白いです。ネイルと他のジャンルを跨ぐことができるのはありがたいですし、これからももっと関わっていきたいと思いますね。

写真との組み合わせも、昨年からシリーズ化してみました。きっかけは2020年の秋に、写真家で友人の北田瑞絵さんが撮影されたお写真を台紙に、コラボつけ爪を作ったこと。そもそも写真が台紙になったつけ爪があってもいいはずなのに、なぜないんだろうと思ってました。

「つけ爪らしくないつけ爪を作りたい」と普段から思っているので、台紙にする写真もネイルらしいものというよりは、生活を感じられる写真や、季節感のある写真、食べ物の写真などを選んでいます。また、爪の見せ方においても、それまでは白い背景で写真を撮るだけのワンパターンだったので、昨年カメラを買ったことをきっかけに、背景を変えたり小物を使って撮ったりするようになりました。

ネイルの遊び方は人それぞれ、爪それぞれ

セルフネイルをするとき、どうしても色の相性やカラーバランスを考えてしまいがちだと思います。でも、あまりそういったものに縛られず、たとえば休日にいった場所や美味しかったもの、好きなものをスマホで何気なく撮った写真から色を抽出しているのもいいと思います。まずはその色に似たポリッシュを塗ってみる。「推し」の色を塗るのも楽しいと思います。ラフに遊ぶくらいの気持ちで試してみてはどうでしょうか。

私自身、ネイルチップのアイデアを出すときや自分の爪を塗るとき、スケッチなどは書かずに即興で作っています。日常で「アイデアが降りてくる!」みたいなことはあまりなくて、塗る直前までどういうデザインにするか決まっていないことが多いです。あまり気に入らないと思えば除光液で落としたり、違うつけ爪にしたりすることができるのも、ネイルの魅力だと思います。あんまりルールにとらわれず、好きなものを好きなままに塗るのがいちばん楽しいんじゃないでしょうか。

今はメンズネイルをする方も増えてきました。黒一色ではなく、オレンジや黄色などのカラフルな色で爪を彩って好き好きに楽しんでいらっしゃいます。なかには「つめをぬるひと」が作る付け爪を買ってくださる男性がいらっしゃいます(「つめをぬるひと」のアカウントをフォローしてくださる男性も多いです)。

昔、音楽フェスでつけ爪を2,3枚だけつけて楽しそうに遊んでいる様子をシェアしてくれた男性がいらっしゃいました。

なんて素敵なんだろう、と思いましたね。ビールを飲みながら、自分の好きなように装って、踊って。「アクセサリー感覚でつけ爪を使ってもいい」ということを逆に提案されたようで、今でも忘れられないエピソードのひとつです。

「つめをぬるひと」を続けて得たのは、自分への自信

「つめをぬるひと」として活動する前はあまり自分に自信がなくて、「自分なんて」と卑下することもあったのですが、活動を続けるうちに、自分の作ったものを好きと言ってくださる方が増えるのを見ていたら「自分を下げるようなこと言っちゃいけない」と思うようになったんです。それは誰かの「好き」を否定することのように思えて。

それで自分を下げることを言わないようにしていたら、だんだん卑下する気持ちそのものがなくなっていきました。

謙遜と卑下は違うと思うのですが、「ここは改善していこう」みたいなことはあっても、それは今後作る爪で示していけたらいいと思っているので、あえて改善点を言うことも控えています。それが誰かにとって良いと思っている点かもしれないので。

そういう改善は密かに重ねて、謙遜の気持ちは維持しつつ、自分を卑下することはしない。しないというよりも、あまり卑下そのものに必要性がないなと思うようになりました。

爪を塗ることの楽しさに気づいていなかったら、今の自分はいなかったと思います。「人生を変えてくれたもの」と少し大きいことを言ってもいいくらいの変化はありました。今後も爪を経由して、誰も見たことのないようなものを発信していけたらと思っています。

好きをかたちにするヒント

ネイルを楽しんで、おしゃれなセットで写真に残そう。

好きなものを飾ったり、写真に残したり、アルバムにしたり。あなたの「好き」をかたちにするアイデアをご紹介します。

ネイルシールプリントで簡単セルフネイルにチャレンジしてみよう

ネイルシールなら簡単にかわいいネイルにチャレンジできます。キヤノンのプリンターがあれば、テンプレートから好きなデザインを選ぶだけ。自分好みにアレンジすることもできます。

おしゃれな背景を意識して、ネイルの写真を撮ってみよう

お気に入りのネイルは写真に残したいもの。おうちでセットを用意して、こだわりの一枚を撮影してみませんか。ネイルを見せる写真を撮るコツを参考に、お気に入りのネイルフォトにチャレンジしてみてくださいね。

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ネイルアートは自由だ! ネイルとカルチャーのボーダレスな遊び方。
https://personal.canon.jp/articles/life-style/itoshino/list/nail
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https://personal.canon.jp/-/media/Project/Canon/CanonJP/Personal/articles/life-style/itoshino/list/nail/image/thumbnail-main.jpg?la=ja-JP&hash=8CE4EB6AEB967960842BC2A62262B5E7
2022-08-25