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祖母から私へ、私からあなたへ。焼き菓子がつなぐもの。

Text & Photo : gemomoge

焼き立てほわほわのタルトにマフィン、スコーンにパウンドケーキ……。家族揃って大の甘党という調理師のgemomogeさんがSNS上で紹介する手作りお菓子はどれも家庭的で、子供と一緒につくりやすいレシピがたくさん。小さい頃から大切な人たちを笑顔にしてきた焼き菓子は、彼女にとって「小さなしあわせを運んでくれるタネ」なのだとか。今回はそんな小さなしあわせにまつわる物語を、レシピとともに少しばかり聞かせていただきました。

PROFILE

gemomoge

フードカメラマンとして活動しながら、趣味のお菓子作りを撮影してSNS やブログにレシピ投稿。

焼き菓子と笑顔に囲まれて育った子供時代

手作りのお菓子にまつわる私の思い出には、必ず大切な人の笑顔がついてきます。

まず忘れられないのが、私が幼稚園児だった頃の思い出です。普段はお菓子作りをしない母ですが、私の誕生日にはチョコレートケーキを焼いてくれました。母がボウルで混ぜてケーキを焼く間、甘い匂いがするオーブンの中身は私のためだけのものだと思うと嬉しくて、ちょっと焦げたチョコレートケーキと母の笑顔、父のさらに大きな笑顔が忘れられません。

小学生になると長期休みには父方の祖父母宅に長く子どもだけで滞在しました。祖母は一日の大半をキッチンで過ごす人で、お菓子もよく作っていました。自然と私も一緒に作る機会が増え、焼き菓子の基本はこの時に学びました。祖母は私と妹が来ると、婦人会で習った手書きのレシピメモを見せてくれて、毎日何かと焼いてくれたのを思い出します。

一方、実家で同居していていた母方の祖母は、とても甘いものが好きなおばあちゃんでした。私が作ったお菓子はどんなに失敗した柔らかいクッキーでも、焦げて崩れたプリンでもニコニコ美味しいと食べてくれました。おかげでお菓子を作るハードルは低くなり、相当な数のお菓子を作っていたように思います。

こんな風に日常的にお菓子をよく作る環境で育ったので、お菓子作りが好きな女の子というよりも、むしろ食べたいものは食べたいときに作る人間に育ちました。そんな私が焼き菓子にしっかりのめり込むきっかけとなったのは、高校の時にカナダへホームスティした時に出会った、イタリア系カナダ人のお母さんです。スティ先のご家庭の隣に住んでいた彼女は、私の焼菓子の概念をすっかり変えてくれました。

彼女は、どれもとびきり美味しいお菓子を作るのに決まったレシピがなく、お米を炊くようにケーキを作る人でした。長く日本でレシピの分量や手順に縛られていた私には驚きの連続。彼女は食べたい味を想像して手を動かし焼き上げ、おいしいうちに食べることが大事だと教えてくれました。この出会いが、特別ではないカジュアルな焼き菓子作りを知るきっかけになりました。

あまくて、おいしくて、しあわせ。ちいさな幸せがつながる暮らし。

そんな私の夫は甘党で、結婚した今も常にお菓子を作る日々です。子どもが生まれてからは毎日終わりのない育児の中、時間を見つけては焼きっぱなしで作れるお菓子をたくさん作りました。焼き菓子は2時間もあれば出来上がりますので、繰り返しに思える育児の日々の中で、彩りと小さな達成感が得られます。今思うと育児中の大変な時期に、あえて焼き菓子を焼くことで私自身が一番助けられたなと感じています。

焼き菓子を家庭で焼く楽しみのひとつは、家族全員が“焼き上がりを待つ”時間を共有できること。3時のおやつのマフィンを手作りすると、2時過ぎから準備して焼き上がりまでの時間を楽しむことができます。そんなワクワクが簡単に家族で共有できるのは焼き菓子だけではないかと思います。オーブンの前でカウントダウンする子どもを見ると私も嬉しくなってしまう大切な時間です。

ご家庭で初めての焼き菓子作りに挑戦するとき、お勧めするのは“簡単で美味しいレシピを1つ選び、何度も繰り返し作ってレシピを自分のものにする” ことです。簡単で美味しい焼き菓子の成功を積み重ねると次に続くモチベーションになりますし、何度も作ることで自分の中でそのレシピの感覚ができます。ひとつのレシピのイメージと自信をもって別のレシピに取り掛かると、もし失敗しても全ての自信を失うことなく、前の成功体験を残したまま、まためげずに次に取り掛かることが出来ると思います。

ここで私のブログ記事の中でも、初心者向けでハードルの低いホットケーキミックスで作るチョコレートマフィンのレシピをご紹介します。これはホットケーキミックスを使うのにミックス粉の独特な味がまったくしない配合で、なおかつ簡単に成功するレシピです。
手作りお菓子が盛り上がるバレンタインデーの時期には、本当にたくさんの方から作ったよ、とご報告を受け、私も幸せのおすそわけをいだたきました。

『バターなしホットケーキミックスで作るダブルチョコレートマフィン』

マフィン型10個分

  • ホットケーキミックス 200g
  • 粉砂糖 100g
  • ココアパウダー 20g
  • 板チョコ 3枚
  • 牛乳 160cc
  • 油 70cc
  • 卵 1個
  • バニラオイル 少し
  • ホットケーキミックス、粉砂糖、ココアパウダーボウル内でよく混ぜ、そこに板チョコ2枚を小指サイズに割ったものを入れて合わせる。
  • 牛乳と油と卵とバニラオイルをよく混ぜ合わせたものを、1.のボウルに合わせてへらで練らないように、でも艶が出るまで混ぜ合わせる。
  • 型に流したら残りの板チョコを割ってトッピングして、200℃に予熱したオーブンで20分ほど焼く。

熱々のうちに1つぜひ食べてみてください。そして冷めても固くならないのでジップロックなどに保存してぜひ次の日のお楽しみにもお使いください。
簡単にワンボウルで混ぜるだけのお菓子です。お子様にお任せしても失敗しにくいので、親子でつくるファースト焼き菓子にもぴったりです。

焼き菓子のことを考える時、私はいつも一緒に作ってくれた、一緒に食べてくれた人たちの笑顔を思い出します。小さい頃は家族と楽しみ、学校では友人と一緒に教室で食べて、学生時代は行った先々で焼き菓子をきっかけに交友関係を広げることが出来ました。そしてまた家庭をもち、母となった今では毎日のおやつを通じて子どもたちと楽しむことができています。最近ではブログやSNSで作ったお菓子の投稿を通じてたくさんの方々とお話しすることも増えました。私にとって焼き菓子はいつも私を助けてくれる小さな幸せの素です。これからも家族のために毎日のおやつを楽しんで作っていけたらと思っています。

好きをかたちにするヒント

お菓子作りに手作りのワンポイントを!

好きなものを飾ったり、写真に残したり、アルバムにしたり。あなたの「好き」をかたちにするアイデアをご紹介します。

かわいいラッピングアイテム

ポップなかわいいラッピングアイテムで彩りをプラス。バレンタインにはもちろんですが、おもてなしにもぴったり。

ペーパーバッグ

お菓子を配るときのペーパーバッグも、自分で手作りしてみませんか?プリントする用紙によって使い分けができます。

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祖母から私へ、私からあなたへ。焼き菓子がつなぐもの。
https://personal.canon.jp/articles/life-style/itoshino/list/bakedgoods
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https://personal.canon.jp/-/media/Project/Canon/CanonJP/Personal/articles/life-style/itoshino/list/bakedgoods/image/thumbnail-main.jpg?la=ja-JP&hash=305C7600F4FC827883A19750BFC07050
2020-12-16