水族館に住みたい、写真を撮り続けたい。人生をかけた水族館巡り。



Photo : Shiromi Tsukasa

「住めるものならば水族館に住みたい」と爽やかに笑う、水族館写真家の銀鏡つかささん。大学時代に出会った一冊の本をきっかけに、お金と時間(そして水族館からのニュースが入れば)の許す限り北へ南へと水族館を巡る日々。なかには1日のうち移動時間15時間、滞在時間3時間なんてことも。それが苦にならないのは、その一瞬にしか出会えない光景に水族館で出会えるから。機材を買い足す度、何度でも水族館へ足を運び直すほどの水族館と写真マニアである彼に、水族館での撮影のポイントと見どころ、そしてその愛の深さをお聞きしました。

プロフィール

銀鏡つかささんの写真

銀鏡つかさ(しろみ・つかさ)
水族館写真家。水族館に魅せられ、88もの水族館を巡る水族館ラバー。見た人が水族館に行きたくなるような躍動感のある、生き物の力を感じる写真を多く撮影する。自身初の書籍「日本の美しい水族館(エクスナレッジより出版)」を2022年9月に出版。
Twitter :@tsukarium

水族館の沼に、ようこそ

晴れた日、水族館の水槽に差し込む太陽の光がつくる光のカーテン。そのゆらめきを眺めるうちに時間がとけていき、しばらく呆然と立ち尽くしてしまう……。気づけば閉館時間。開館時間からどれだけ居ても、見飽きることはありません。水族館に行くと一時が万事こんなありさまで、まさに水族館の虜とは僕のこと。そんなわけで水族館に行くならばひとりで! がお決まりです。

アクアマリンふくしまにて撮影

振り返ると、幼い頃から親によく連れられて水族館に遊びに行っていました。しかし今ほど狂ったように足を運ぶほどではなく、水族館好きを高じさせる大きなきっかけとなったのは『全館訪問取材 中村元の全国水族館ガイド 125』(講談社)という一冊との出会いでした。この本は水族館プロデューサーである中村元さんが執筆された書籍で、当時の僕は何を思ったのか、この本に記載されている水族館の全てを、長い時間をかけてでも全館巡ってみたいとふと思ったんです。これが将来の夢など特になく、なんとなく「水族館を建ててみたいな」と思って建築学科のある大学に入学した僕の、人生を大きく変える出来事になるとは思いもよりませんでした。

それ以来、バイトをしてはお金を貯め、時間ができたら日本中の水族館に行くことを繰り返してきました。そこからですね、水族館の沼にズブズブとはまっていったのは。社会人になった今も珍しい魚が入ったと聞けば、家族や職場に無理を言って、次の日にはその水族館へ(どれだけ遠くても)飛んでいって、見て、撮影して、すぐに帰っています。周りも「ああ、また行くのね」みたいな感じで、僕の異常ともとれる行動に対しても麻痺してしまっています(笑)。

アクアマリンふくしまにて撮影
アクアマリンふくしまにて撮影
アクアマリンふくしまにて撮影
アクアマリンふくしまにて撮影
アクアマリンふくしまにて撮影

往復7日、滞在3時間。たどり着いた辺境の地、むろと廃校水族館。

むろと廃校水族館(高知県)への訪問はなかなか無茶をした遠征です。あんまりお金に余裕がない時期で「青春18きっぷ」を駆使して道中様々な水族館へ寄り道しながら往路5日、復路2日かけて現地まで移動しました。滞在時間はたったの3時間ほど。公共交通機関でのアクセスが非常に難しいところで、最終的にはバスの乗り継ぎでしか辿り着けないのですが、いざ見学となるともう本当に楽しかったですね。「毎日ここに見に来たい!」ってなりました。

むろと廃校水族館にて撮影
むろと廃校水族館にて撮影

むろと廃校水族館の展示生物は、基本的に地元の漁師さんと提携して、漁で獲れた市場価値の少ない魚を水族館に提供していただいているんです。ですから基本的には特定の生き物が常に展示されているということはありません。そういう理由もあって、スタッフさんが言うには「全部推し!」なのだとか。

むろと廃校水族館にて撮影

珍しい生き物が入ることも多く、長期飼育が難しい外洋のサメなんかもここだとよく見ることができるんです。外洋という、いわゆる広い海を縦横無尽に移動して生活する生き物なので、輸送時に亡くなってしまうこともあるようですが、ここは海が近いのでそうした懸念もあまりないようです。サメマニアの方にとってはたまらないそうですよ……。

沖縄美ら海⽔族館、北の大地の水族館、海遊館……
飽きることのない水族館ごとの個性

沖縄美ら海⽔族館にて2021年12⽉14⽇撮影

国営沖縄記念公園(海洋博公園)内にある沖縄美ら海⽔族館では、沖縄滞在期間のほぼ全ての時間をここで過ごしました。ずっと来たかった水族館だったのでもう伺えただけで楽しくなってしまって! 結果的に4日間、ずっと美ら海水族館にいましたね。

1日は仕事でしたが、下見のため前入り。その段階でもうたまらず年間パスポートを購入して、開館から閉館まで個人的な写真を撮ってからいざ次の日、仕事でまた撮影(笑)。でもまだまだ撮り足りなくて、その翌日にも美ら海水族館に伺ってまたまた撮影を。さすがにその日には帰ろうと思っていたのですが、どうも後ろ髪を引かれてゆっくり歩いていたら、最終のバスを逃してしまい。帰れなくなったことをいいことにもう1泊して、もう1回美ら海水族館に行って撮影(笑)。

沖縄美ら海⽔族館にて2021年12⽉16⽇撮影

でも飽きないんですよね。生き物たちってずっと動きがあって、思わぬ瞬間がいきなり訪れたりするんです。ファインダー越しにのぞいていれば、その瞬間をずっと追っていられる。それがもう楽しくて。何時間だってその行動が見たいし、ハッとするような構図が見たくて2、3時間だって同じ被写体を追いかけているなんてことが普通にあります。

沖縄美ら海⽔族館にて2021年12⽉14⽇撮影

今まで撮った写真の中で「よく撮れた!やった!」と感慨深かったのは、北の大地の水族館(北海道)で撮影したカラフトマスの写真。毎年8月末〜9月上旬から、長くても10月中旬までしか展示されないサケの仲間で、ちょうど道東の川に帰ってくる時期に水族館に展示される魚なんですが「これを超えるものはない!」と心から思える、絶妙な写真を撮ることができました。

個人的に魚の躍動感が伝わる写真の構図というか、魚のうねりを正面に捉えた構図がすごく好きなんです。見事にそれがおさえられたこともありますが、なおかつ口を開いていて、水の流れと泡感、光の差し方もあってすごく神々しい雰囲気が捉えられていて。本当にお気に入りです。

北の大地の水族館にて撮影

どうしても被写体が動いている分、簡単には撮影できないのですが、ある程度水族館での撮影に慣れている方には是非挑戦していただければと思います。ポイントは魚がターンする瞬間や、ペンギン、カワウソなどの動物たちが泳いでいる瞬間を狙うこと。それから水底でじっとしている魚が泳ぎ出す瞬間まで辛抱強く待ち続けることもひとつです。条件が揃うまでの忍耐力が求められますが、人があまりいない平日などに奇跡の瞬間を狙ってみるのも楽しいですよ。

(撮影の際、AF補助光を含めたフラッシュ撮影や水槽が独占状態にならないよう配慮することは本当に大事です。マナーが悪いと将来的には水族館で撮影すること自体が制限されるなど、自分たちの首が絞まるので。僕自身もつい夢中になってしまうこともありますが、極力意識して気をつけています)

海遊館にて撮影

水族館の定義は様々なのですが、現在全国に130館ほどあると言われる水族館のうち、あらためてここの水族館がおすすめです! と挙げるならば、海遊館(大阪府)はその筆頭でしょうか。(水族館というだけで全部好きなのですが!)

なにはともあれ日本第2位の大きさを誇る水槽が圧巻。魚類最大種のジンベエザメが2匹もいます。水量は5400トンだったかと思いますが、その迫力、大きさに圧倒されますよ。

海遊館にて撮影

照明にもこだわっていて、太陽が雲に遮られる一瞬の陰りなど、LEDライトで自然の光の入り方を再現しています。その解説を聞くまで、人工的なものだとは思えないほど自然な照明加減で。そこまでするんだ……と感動しますよね。

訪問園館数88館。水族館巡りはまだまだ終わらない。

すみだ水族館にて撮影

個人的に水族館の見どころは水族館の雰囲気そのものもありますが、同じ展示生物でも水槽や見せ方が水族館によって違うので、その比較がとても面白いんです。わかりやすい例を挙げるとミズクラゲですね。ここ数年、クラゲ展示のリニューアルラッシュも続いていたので、見比べることを目的に水族館を巡るのも面白いですよ。

まず、サンシャイン水族館(東京都)について。ここのクラゲの水槽は幅約14メートルの大パノラマ水槽! 国内最大級となる横幅で、ここでは暗い海の中で、無数のミズクラゲに包まれるような没入感と浮遊感が感じられます。

サンシャイン水族館にて撮影
京都水族館にて撮影

京都水族館(京都府)にはドーナツ型の水槽があなたを待っています。来館者はそのドーナツの穴のなかに入ることができて、360度、視界全てがミズクラゲに囲まれているような状態に。

ミズクラゲの飼育は特に水流のバランスが難しいのですが、それさえクリアできれば割とどんな形の水槽でも展示できるそうなので、水族館ごとに個性が出やすいんです。

水族館について語り始めるともうキリがありません。いろいろとお話ししたいことばかり。けれどもあらためて「水族館がどんな存在か」と聞かれると格好つけているようで非常に恥ずかしいのですが、敢えて言葉にするならば、僕にとっての第2の家。と言うか、もはや普通に「帰る場所」という感じです。身近すぎて、気づけば水族館にいるような日々なので(笑)。

アクアマリンふくしまにて撮影

安心感しかり、興奮する瞬間しかり、いろんな感情と瞬間が水族館で発生している。僕の人生が要約されているようなものなので、住めるものなら住みたいですね。一度住んだらもう二度と寝ることができないほどカメラを構えているでしょうけど、それほどに自分の人生そのものなんです。

フォトジェニックな水族館で、とっておきの一枚にチャレンジしてみよう。

好きなものを飾ったり、写真に残したり、アルバムにしたり。あなたの「好き」をかたちにするアイデアをご紹介します。

水族館撮影の基本をチェック

明るさが足りない場所で、ガラス越しに動くものを撮影したい…。水族館での撮影はなかなか難易度が高いです。でも、ポイントを押さえれば、ワンランク上の水中写真を撮ることができます。

差し込む光を意識して、透明感のある水族館写真を撮ってみよう

光が差し込む水槽で、透明感のある写真にチャレンジしてみませんか。水槽内の人工物を避けることで、ぐっと雰囲気が増します。ロケーションをいかした撮影方法のコツを見て、お気に入りの一枚を残してみて。

あなたへのおすすめ記事

本ページに掲載されている画像、文書その他データの著作権は著作者に帰属します。
また、無断で複製、転載することは、著作権者の権利の侵害となります。