関野 吉晴 写真展:海のグレートジャーニー
キヤノンギャラリー

本展は「海のグレートジャーニー」と題し、探検家 関野吉晴氏がかつて海を渡って日本列島に到達した人類の足跡を辿るため、2009年4月にインドネシアのスラウェシ島を出発してから沖縄石垣島に至るまでの約4700キロメートルの航海を記録した写真展です。

インドネシアに自生する木を使い、手製の道具で削り出したカヌー作りや、島影や星を頼りに外洋を進む船旅の様子、厳しくも美しい自然の中で逞しく生きる人々の表情など、約75点の作品を展示します。

作品はすべてキヤノンの大判プリンター「imagePROGRAF」でプリントし展示します。

開催日程 会場
2012年7月27日(金)~8月31日(金)
休館日:日曜日・祝日
※ 2012年8月11日(土)~8月19日(日)夏期休館

オープンギャラリー品川

作者メッセージ

アフリカで生まれた人類は世界中に拡散して行きました。最も遠くまで移動した人類は南米最南端まで到着しました。そのルートをイギリスの考古学者はグレートジャーニーと名づけました。1993年から2002年にかけて、私はそのルートを逆ルートで自分の腕力と脚力で移動しました。その後、2004年からは太古の時代に人類が日本列島にやって来たルートを辿りました。数多くあるコースの中で主要な3コースを選びました。シベリアからサハリン経由で北海道に来るルートとヒマラヤの山麓を通って、中国、朝鮮半島経由で日本まで来るルートは2007年に終わりました。

最後のルートはインドネシアとマレーシアとインドシナ半島が融合して形成していたスンダランドから、海を通って日本列島にやって来た人類の足跡を辿りました。そのためのカヌー制作のコンセプトは「自然からすべての素材をとって来て、自分たちで作る」というものでした。

早速始めたのは、九十九里海岸での砂鉄集めでした。たたら製鉄をして、インドネシアで木を切り、穿つ道具を自分たちで作るためです。120kgの砂鉄を集め、岩手で200kgの炭を焼きました。それらを使ってタタラ製鉄をして、奈良の刀鍛冶河内國平さんと野鍛冶の大川さんの協力で、斧、ナタ、チョウナ、ノミが完成しました。それをインドネシアに持っていき、大木を伐り、二隻のカヌーを作りました。
インドネシアではスラウェシ島のマンダール人に協力してもらい、半年がかりでカヌーが完成させました。船体、帆、アウトリガー、ロープ、紐、塗装すべてが自然からとってきたものを利用しました。
インドネシアのスラウェシ島から沖縄の石垣島までおよそ4700kmを3年がかりで航海しました。1年で終えるつもりでしたが、風任せ、潮任せの旅でカヌーは思うように進みませんでした。
島々に寄って、薪、水を補給しながら航海を続けました。素焼きの窯で、まきに火をつけて、釣った魚や米を料理して胃袋を満たしました。
今回の旅では島影と星を頼りに、コンパス、GPSやチャート(海図)を使いませんでした。五感だけを利用してナビゲーションした太古の人々に思いを馳せながら航海をしたかったからです。
航海を初めた10日間で120kmしか進めなかった時は暗い気持になりましたが、我慢強く、待ち、漕ぎ、帆走して、最後に台湾を出た時には2日で300km近く走りました。改めて自然は恵みを与えてくれるが、恐ろしいものでもあり、思うどおりにはならないものだと実感しました。

今回の写真は、カヌー作り、航海とともに漂海民バジョなど海に適応して暮らす人々の姿をとらえた写真を展示しました。ここ4年間専念した「海のグレートジャーニー」の記録です。御笑覧していただければ幸いです。

関野 吉晴 講演会開催のご案内

今回展示した作品を紹介しながら、撮影時のエピソードなどについて関野吉晴氏が講演します。

日時
2012年7月31日(火)19時00分~20時30分
会場
キヤノン S タワー 3階 キヤノンホール S
(住所:東京都港区港南2-16-6 キヤノン S タワー3階)
定員
約300名
入場
無料
お申し込み
お申し込みフォームへ ※2012年7月29日(日)締切

プロフィール

関野 吉晴(せきの・よしはる)

【略歴 】
探検家・医師。
1949年1月20日東京都墨田区生まれ。
1975年一橋大学法学部卒業。
1982年横浜市立大学医学部卒業。

一橋大学在学中に探検部を創設、アマゾン全域踏査隊長としてアマゾン川全域を下る。その後医師となり、25年間に32回、通算10年間以上にわたって南米への旅を重ねる。1993年からアフリカに誕生した人類がユーラシア大陸を通ってアメリカ大陸に拡散した道を、南米最南端から逆ルートでたどる「グレートジャーニー」に挑み、2002年2月タンザニア・ラエトリにゴールした。
2004年7月から「新グレートジャーニー 日本人の来た道」をスタート。2011年6月にインドネシアから石垣島まで4700kmの航海を遂げ、旅のゴールとした。
1999年、植村直己冒険賞(兵庫県日高町主催)受賞。現在、武蔵野美術大学教授(文化人類学)。

グレートジャーニーの旅の記録として『グレートジャーニー全記録I 移動編/II 寄道編』(毎日新聞社 2006年)、写真集『グレートジャーニー 人類400万年の旅』全8巻(毎日新聞社 1995~2002年)、『新グレートジャーニー 日本人の来た道 北方ルート サハリンの旅』(小峰書店 2006年)、『関野吉晴対談集―グレートジャーニー1993~2007』(東海教育研究所 2007年)、『海のグレートジャーニー』(クレヴィス 2012年)などがある。

著作権について
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