ニュースリリース

2020年10月13日
特定非営利活動法人 京都文化協会
キヤノン株式会社

国宝「松林図屏風」などの高精細複製品を国立文化財機構へ寄贈
寄贈作品を東京国立博物館にて展示

特定非営利活動法人 京都文化協会(以下「京都文化協会」)とキヤノン株式会社(以下「キヤノン」)が共同で取り組んでいる「綴(つづり)プロジェクト」(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)の第13期作品として、東京国立博物館所蔵の国宝「松林図屏風」など5作品の高精細複製品を制作し、独立行政法人国立文化財機構(以下「国立文化財機構」)へ寄贈しました。これらの作品は、東京国立博物館にて10月27日より展示されます。

松林図屏風

松林図屏風

国宝「松林図屏風」など文化財5作品の高精細複製品を制作・寄贈

「松林図屏風」(長谷川等伯筆)は、霞に包まれて見え隠れする松林のなにげない風情を情緒豊かに表現した、近世水墨画における最高傑作といわれる作品です。綴プロジェクトでは第1期(2007年度)に同作品の高精細複製品を制作・寄贈しています。今期はキヤノンの撮影システムにより約54億画素の高精細データの取得を実現し、プリント技術の向上と合わせてオリジナルにより忠実な高精細複製品を制作しました。また、「松林図屏風」の他、第13期作品として東京国立博物館所蔵の国宝「納涼図屏風」(久隅守景筆)、重要文化財「歌舞伎図屏風」(菱川師宣筆)、重要文化財「秋草図屏風」(俵屋宗雪筆)、九州国立博物館所蔵の「唐船・南蛮船図屏風」(狩野孝信筆)の高精細複製品を制作し、国立文化財機構へ寄贈しました。これにより、鑑賞の機会が限られるオリジナル文化財をより良い環境で保存しながら、高精細複製品を広く公開することで多くの方々に日本の文化財に触れる機会を創出します。

寄贈作品を東京国立博物館にて展示

寄贈作品は、2020年10月27日より12月6日まで東京国立博物館で開催される「親と子のギャラリー トーハク×びじゅチューン!「なりきり日本美術館リターンズ」」および東京国立博物館の九条館にて展示されます。「なりきり日本美術館リターンズ」では、高精細複製品に映像を投影するプロジェクションマッピングを行うなど、高精細複製品ならではの新たなアート体験を提供します。また、本イベントでは、国立文化財機構文化財活用センター(以下「文化財活用センター」)との共同研究プロジェクトで制作した重要文化財「風神雷神図屏風・夏秋草図屏風」(尾形光琳筆・酒井抱一筆)の高精細複製品も展示されます。

  • 第13期で寄贈する5作品のうち、「親と子のギャラリー トーハク×びじゅチューン!「なりきり日本美術館リターンズ」」では「松林図屏風」、九条館には「納涼図屏風」、「秋草図屏風」、「歌舞伎図屏風」が展示されます。なお、九条館にてイベントが開催される日は上記作品の展示は行いません。展示日については文化財活用センターのホームページをご確認ください。
  • 新型コロナウイルス感染症の影響により、イベントの中止、または日時の変更などを行う可能性があります。また、東京国立博物館への入館にはオンラインによる事前予約が必要です。詳細は文化財活用センターもしくは東京国立博物館のホームページをご確認ください。
    (イベントの開催情報)文化財活用センターホームページ:https://cpcp.nich.go.jp/
    (入館方法)東京国立博物館ホームページ:https://www.tnm.jp/

【綴プロジェクト第13期作品(全5作品)】

国宝「松林図屏風」(長谷川等伯筆) 原本:東京国立博物館所蔵

国宝「松林図屏風」(長谷川等伯筆) 原本:東京国立博物館所蔵

国宝「納涼図屏風」(久隅守景筆) 原本:東京国立博物館所蔵

国宝「納涼図屏風」(久隅守景筆) 原本:東京国立博物館所蔵

重要文化財「歌舞伎図屏風」(菱川師宣筆) 原本:東京国立博物館所蔵

重要文化財「歌舞伎図屏風」(菱川師宣筆) 原本:東京国立博物館所蔵

重要文化財「秋草図屏風」(俵屋宗雪筆) 原本:東京国立博物館所蔵

重要文化財「秋草図屏風」(俵屋宗雪筆) 原本:東京国立博物館所蔵

「唐船・南蛮船図屏風」(狩野孝信筆) 原本:九州国立博物館所蔵

「唐船・南蛮船図屏風」(狩野孝信筆) 原本:九州国立博物館所蔵

【「綴プロジェクト」とは】

「綴プロジェクト」は、オリジナル文化財の保存と高精細複製品の活用を目的として、京都文化協会が主催し、キヤノンが共催して推進している社会貢献活動です。キヤノンの入力、画像処理、出力に至る先進のデジタル技術と、京都伝統工芸の匠(たくみ)の技との融合により、屏風や襖絵、絵巻物など古くから日本に伝わる貴重な文化財の高精細な複製品を制作して寄贈しています。2018年の第11期作品より、複製品の制作過程で使用するカメラやレンズなどの撮影システムを刷新し、これまで以上に高精細な複製品の制作が可能となりました。
2007年からスタートした本プロジェクトは、海外に渡る以前の所有者などに寄贈する「海外に渡った日本の文化財」と、小・中学校の教科書に掲載の多い文化財などを対象に、教育現場で生きた教材として活用する「歴史をひもとく文化財」の2つのテーマのもと、毎年文化財を選定しています。葛飾北斎や俵屋宗達、尾形光琳の作品など、現在までに全56点の高精細複製品を制作、寄贈しました。

  • 第11期作品より、制作で使用したカメラは「EOS 5D Mark IV」、レンズは「EF400mm F2.8L IS II USM」。第12期作品より、大判プリンターも「imagePROGRAF PRO-4000」に変更。

入力

高精細デジタルデータの取得

文化財の原寸大出力が可能な高画質データの取得には、デジタル一眼レフカメラを使用。専用に開発した旋回台を用いて多分割撮影を行い、合成して高精細デジタルデータに仕上げます。

色合わせ

高精度なカラーマッチング

取得された高精細デジタルデータを、キヤノン独自のカラーマッチングシステムを用い撮影環境の照明と合わせて画像処理し、その場で出力し色合わせを行います。色合わせの労力と文化財への負担を軽減しました。

出力

世界最高レベルのプリンティング技術

日本画の繊細な濃淡、陰影が生み出す立体感の表現を大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF」が可能にしました。使用する和紙や絹本は独自に研究開発され、文化財の出力および金箔加工などに最適化されています。

金箔・金泥・雲母

古来より伝承される伝統工芸の技により再現

日本文化財の最大の特徴となっている「金箔(きんぱく)・金泥(きんでい)・雲母(きら)」は京都西陣の伝統工芸士が熟練の手技を振るいます。
箔の経年変化の再現には、独自の「古色」の技法が用いられます。

表装

京で鍛えられた確かな技術

作品は、京都の表具士により表装がなされます。日本独自の表具類を用い、屏風であれば金具の古色や裏面の切地まで、襖であれば建物への設えまでオリジナル文化財に近い姿で忠実に再現され、完成します。

【「なりきり日本美術館リターンズ」について】

名称
親と子のギャラリー トーハク×びじゅチューン!
「なりきり日本美術館リターンズ」
概要
世界のびじゅつを、井上涼さんの歌とアニメで紹介する番組、NHK Eテレ「びじゅチューン!」で取り上げた作品について、複製や映像をつかった“なりきり”体験が楽しめるイベント。
会期
2020年10月27日(火)~12月6日(日)
開館時間
9:30~17:00(ただし、会期中の金曜・土曜は21:00まで開館)
休館日
月曜日(ただし、11月23日(月・祝)は開館し、翌24日(火)は休館)
会場
東京国立博物館 本館 特別5室・特別4室
主催
東京国立博物館、文化財活用センター、NHK
入場料
東京国立博物館 総合文化展観覧料
一般1,000円、大学生500円、高校生以下無料
*オンラインによる事前予約が必要です。また、東京国立博物館にて開催中の特別展の事前予約をされた方は、総合文化展の事前予約の必要はありません。

本イベントでは、綴プロジェクト第13期作品である「松林図屏風」の高精細複製品、および文化財活用センターとの共同研究プロジェクトで制作した「風神雷神図屏風・夏秋草図屏風」の高精細複製品が展示されます。オリジナル文化財では実現が難しい屏風に映像を投影するプロジェクションマッピングなど、作品とデジタルコンテンツの融合による新たなアート体験が提供されます。なお、「風神雷神図屏風」(尾形光琳筆)および「夏秋草図屏風」(酒井抱一筆)は、元々二曲一双の屏風の表裏に描かれた作品ですが、現在は作品の保存の観点から表裏を分けて保存されています。高精細複製品では表裏を一体とした形で制作し、本来の姿を復元しました。

重要文化財「風神雷神図屏風」(尾形光琳筆) 原本所蔵:東京国立博物館

重要文化財「風神雷神図屏風」(尾形光琳筆)
原本所蔵:東京国立博物館

重要文化財「夏秋草図屏風」(酒井抱一筆) 原本所蔵:東京国立博物館

重要文化財「夏秋草図屏風」(酒井抱一筆)
原本所蔵:東京国立博物館

  • キヤノンは文化財活用センターと、文化財の高精細複製品の制作と活用に関する共同研究プロジェクトを2018年から実施しています。本プロジェクトは、日本美術の名品について、「綴プロジェクト」の技術を用いて高精細複製品を制作するとともに、新しい活用方法の開発についての共同研究と実証実験を行っています。

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