第5回キヤノンフォトグラファーズセッション

写真と生きる。

さらに上をめざす、若き写真家たちへ。第5回 キヤノンフォトグラファーズセッション

ワークショップ講師 ハービー・山口 瀬戸正人(敬称略)

第2回キヤノンフォトグラファーズセッション ファイナルセッション・レポート。

第2回キヤノンフォトグラファーズセッション ファイナルセッション・レポート。

2013年5月25日(土)、キヤノンプラザ銀座にて、第2回キヤノンフォトグラファーズセッションのファイナルセッションが開催されました。ファーストセッション(1/26)とセカンドセッション(3/23)を通じて、講師である写真家 立木義浩・平間至両氏の指導のもと、写真家をめざす10名のファイナリストが写真集と写真展の展示案の作成に挑戦してきました。ファイナルセッションはその集大成。講師とファイナリストが本気で語りあい、新たに撮影した写真を加え再構成するなどして、練りに練った写真集と写真展の展示案が、ファイナリストたちからプレゼンテーションされました。講師からの温かく、時に鋭い講評もあり、会場は熱気に包まれました。
そして最終選考の結果、2名のキヤノン賞受賞者が発表されました。

立木 義浩グループ:プレゼンテーション

西岡 潔さん タイトル:そこにあること
ぼくは、風景とか日常とかジャンルに偏らず、できる限り客観的に観察して撮ることを心がけています。でも、目の前でうごめいているすべてのものが見えているわけではありません。見る人の洞察力によって見え方が変わるような写真にしていけたらと思います。

西岡 潔さん

講師 立木 義浩氏の講評
西岡くんは、抑制のきいた普遍を目指しているのでしょう。多種多様の写真やその状況が混沌としているように見えますが、根底は感傷家でありながらそれをウィットで消しています。ラストの馬は大事なものを無くした人にも似て美しくも哀しいですね。

講師 平間 至氏の講評
「そこにあること」をぼくなりに解釈すると「存在の仕方」。そこにあるものが西岡くんにとってどんな存在なのか。それをもっと考えてほしい。カラーは意識、モノクロは存在を撮るのに適している。存在を撮るなら、モノクロ写真の表現に挑んでみるのもいい。

伊原 詩乃さん タイトル:My world in my school
私が写真をやっている理由は、自分の世界を表現したいからです。学生の私にとっていちばん身近なのは学校だと思って撮ってきました。テーマは、ちょっと不思議で、ちょっと非日常な生活。中学生のときに撮った写真もありますが、ストレートに私の世界が伝わるように構成しました。

伊原 詩乃さん

講師 立木 義浩氏の講評
赤い目隠しとか、友だちを引きずっていく瞬間とか、水道の蛇口とか、写真の世界にインパクトがあって、何の苦労もなくこんな写真を撮る感性が脅威だね。「怖いもの知らず」の若さだけで撮れる「真実」もあります。大切なのは続ける勇気です。この名作はキチンと保存しておいてください。

講師 平間 至氏の講評
毒があって、乱暴なところがあって、思春期じゃないと撮れない写真だと思う。自分の居場所がないという感じは、何歳になっても表現にとって大切な要素。写真はやればやるほど上手になってしまうので、撮るときは「今」の気持ちを忘れないでください。

内藤 由樹さん タイトル:そこにはいけない
私はここ数年、放浪生活をしながら、いろいろな人たちに出会い、写真を撮ってきました。そこで感じたのは、出会った人たちの生活や人生にどんなに興味があっても、自分はその人たちと一緒になれないということ。心の中の憧れと諦めを写真で構成できたらと思いました。

内藤 由樹さん

講師 立木 義浩氏の講評
知らない町、知らない人たち、二度と来ることのない場所との別れのまなざしがもつ哀切は、点景の人々へのいとおしさにもなっています。ある種似たような写真の語り口は内藤さんの「持ち唄」ですね。黄色い牛乳箱のある家の写真は、他の写真と抑揚が違うけれど、静かな閃光を感じます。

講師 平間 至氏の講評
最初見たときは、内藤さんと被写体の間にガラスが一枚あるというか、写っている風景や人々が遠くに見えた。でも見ていくうちに、その人たちの人生を認めて撮っているのがわかり、小さく写っている人たちと内藤さんが共存しているように見えてきて面白かった。

竹ノ谷 浩樹さん タイトル:Soundless
木や草のかたち。水の存在感。夜、僅かな光の中では余計なものが削ぎ落とされて、いろいろなものが新鮮に見えてワクワクします。夜のざわめきとか艶をできるだけ排除して、夜に寄り添いながら静謐な存在感を即物的に撮るよう意識しました。

竹ノ谷 浩樹さん

講師 立木 義浩氏の講評
本人の思惑といささか違って感じるのは、避けようとした「夜のざわめき」や「艶」が逆に頭をもたげて、饒舌な夜が現れた。夜の真っ暗闇と感じられる写真に到達するのは至難の業だと思いますがトライする価値はありますね。本当の闇はもはや人間の中にしかないかも知れません。今後も飄々と写真を撮り続けてください。

講師 平間 至氏の講評
たくさんの写真家が夜を撮っている。そこが難しいところだけど、工夫して撮っているのが分かる。夜は闇と言い換えられるが、その闇をどう扱うかで写真が違ってくる。写真集では、白いスペースでバランスをとっていますが、闇をどう捉えるのかさらに考えると、写真が深くなると思う。

渡久地 葉月さん タイトル:The other side
なんで撮ったかわからない奇妙な写真にも、私の知らない私自身が写っている。人も風景も、セルフポートレートという気持ちで撮ってきました。ファインダーを覗くと、もうひとつの側面が見えてくると思ったので、「The other side」というタイトルをつけました。

渡久地 葉月さん

講師 立木 義浩氏の講評
渡久地さんは、セッションごとに悩みながら変化して来たのだと思います。途中から写真に撮ってはいけないものは何もないんだと気がついた形跡が良い形で表れています。明るい光、空にのびる木、母の哀しみ、怪我した手、貴方の目を通した素適な沖縄を見せてもらいました。

講師 平間 至氏の講評
写真集を開いていくと、画面がのびやかで、左右に広がりがあり、フレーミングにも緊張感がある。いい写真の特長として画面に強いラインがあることがあげられますが、渡久地さんの写真にはそれがある。写真を自由に撮っていて楽しい時期になってきたという気がします。

平間 至グループ:プレゼンテーション

加藤 ゆかさん タイトル:砂場の砂鉄 - 2902 -
好きな場所、好きな道を歩き、撮った写真です。私が砂場、被写体たちが砂鉄。2902は私が住んでいる部屋の番号。いろんな街で被写体に出会い、ドキドキしながらシャッターを切った。写真を選ぶときは、自分の影を見ている気がしてきて、撮ってよかったと思いました。

加藤 ゆかさん

講師 平間 至氏の講評
いい作品は生と死が同居している。加藤さんの写真には、光と影、喜びと悲しみ、撮る人の気持ちが伝わって、写真集をめくる楽しさを感じた。写真展の場合は、プリントをひとつのモノとしてどれだけ存在感をもって見せられるかが大切。

講師 立木 義浩氏の講評
日常の中の出会いを撮った写真は身辺雑記を出ない写真に落ち入りがちですが、事物の断片の向こう側に、昭和の感じというか、懐かしさ、淋しさというか、人間の悲しみを知らず知らずのうちに撮っているような気がします。外景と自分の心の内景を同時に捉えようとする欲深さの先にあるのは心象でしょうか。

中西 雅人さん タイトル:remember
なぜこの写真を撮ったのか。軸があやふやで、ファーストセッション、セカンドセッションと写真が変った。そこで、初めて写真を意識した高校の日に戻って撮ることにした。写真集の構成は考え抜いたあげく、表紙が馬、最後のページが鹿。ああ、ぼくは考え過ぎのバカなのか、そこで気づきました。

中西 雅人さん

講師 平間 至氏の講評
今回、写真を撮る自分の土台、原点に気づいたのは、これから写真を撮っていく上で大切なことだと思う。中西さんの写真を見て感じたのは、生命の持つ多様さ。いろんな生命がある感じが伝わってきた。構図も、まとめ方も、非常に上手だと思います。

講師 立木 義浩氏の講評
写真の方向が、二転三転するのは健康的なこと。ブレないのがいいとも言うけれど、それは知恵が足りないとも言える。でもなぜ、人を撮らないのか気になる。人間に関心があるからこそ、自然の生命を撮っている、というように考えてほしい。馬を見て鹿というたぐいの選考者を揶揄しているのもユーモア有り。

名嘉 来実さん タイトル:ゆらめくるめく
写真を撮るとき、私はあまり考えないようにしています。無我夢中でまず撮る。そのあと写真と個人面談しながら選ぶ。一枚一枚は個として確立していて、群れて一冊の写真集になる。沖縄にはチャンプルー/なんでも混ぜる文化がありますが、写真こそいろいろ強引に混ぜていけると思います。

名嘉 来実さん

講師 平間 至氏の講評
沖縄に生まれ育った人にしか撮れない写真だと思った。光と影は写真にとって大事な要素だけど、名嘉さんの場合、光と光、そして闇。光が当たるほど、白が飛ぶほど闇を感じたりする。それはまさに沖縄の象徴で、本土にはなくなった人の想像を超えたものや、沖縄の複雑な事情を感じる。

講師 立木 義浩氏の講評
あなたが撮ると全部、沖縄になる。ということは細胞に一任するやり方でもある。何をどう撮るのも自由で、撮り手は感じたことを伝えることが出来るはずだ。生活の中での発見が、異なるものを求めていて、新鮮な好奇心を持ち続けていることが分かる。考えて撮るか、感じて撮るか、どちらでもお好きな方を…。

阿部 祐己さん タイトル:The Last year blue roof
ぼくのお祖母ちゃんの家を訪ねて撮った写真です。60年前、嫁いできたお祖母ちゃんは畑仕事をしながら子供を育てた。周囲には何もないけれど、ぼくの心の軸になっている場所。この家が古くなり建て替えるとになった。壊してほしくなくて、なくなるのを強く感じながらシャッターを切りました。

阿部 祐己さん

講師 平間 至氏の講評
レンズと被写体の関係がわかって撮っている。静物的にも、ダイナミックにも撮れる。フレーミングもよく、絵作りが上手です。背中の曲がっているお祖母さんに憧れているのがよく分かる。これからは、お祖母さん以上の被写体に出会うこと、どんなテーマを見つけるかが大事。

講師 立木 義浩氏の講評
カボチャを抱えたお祖母さんの写真。これは時代を超えた普遍の写真ですね。歳月の無慈悲と自然に包まれて生きて来た幸せがあります。とはいえ、厳しい冬をひたすら生きて来て、最後ページの桜は定石ですが、悪くないです。これも阿部くんの人柄ですね。

真田 郁さん タイトル:同類
今回は、すべて動物園を舞台に撮っています。人も、動物も、オブジェも、すべて同類。その関係を作品にしました。奇妙なこと、変わっていることが好きなので、面白い被写体の組み合せも考えました。写真は、私というフィルターを通して見た現実。眼をもっと鍛えたていきたいと思います。

真田 郁さん

講師 平間 至氏の講評
人間も動物も、みんな同じような目線で生きている。その関係に対する撮る人の気持ち、愛情が伝わってくる。ただし「同類」というタイトルは、言い切っているので、もっとイメージが広がるタイトルを考えてもいい。いいバランスで写真がまとまった。

講師 立木 義浩氏の講評
面白いものを発見するには、好奇心がいる。驚きを見つける努力をしていると、いつか面白いものに出会える。野生そのものの動物たちではなく、人工的、人為的に飼育された動物をテーマに、作りものの白熊まで幅を広げたところが楽しい。2枚の写真で見開きを考えたのは秀逸です。

第2回キヤノンフォトグラファーズセッション「キヤノン賞」受賞者発表

立木 義浩グループ渡久地 葉月さん タイトル:The other side

平間 至グループ加藤 ゆかさん タイトル:砂場の砂鉄 - 2902 -

キヤノン賞のお二人の作品は、8月29日(木)~9月4日(水)に開催される「キヤノン賞受賞作品展」(キヤノンギャラリー銀座)で展示されます。同時に、8月28日(水)~9月3日(火)、ファイナリスト10名による合同写真展「ファイナリスト展」(オープンギャラリー品川)を開催します。
どうぞ、ご期待ください。

第2回キヤノンフォトグラファーズセッション「キヤノン賞」受賞者発表

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