有害物質の管理と遵法
管理化学物質排出量の削減
キヤノンでは、生産工程で使われる有害な化学物質の廃絶・削減を推進するとともに、廃絶や削減が困難な化学物質については、大気・水域などへの排出を抑制することを基本方針としています。
こうした方針のもと、約3,000種の管理化学物質※1を「A.使用廃絶」「B.使用削減」「C.排出削減」に分類して、それぞれのレベルに応じた対策を実施し、成果を上げてきました。
2010年は、管理化学物質の排出抑制に向けて検討を続けていた、コンパクトデジタルカメラに施す塗装の水性化を実現。大分キヤノンにおいて、コンパクトデジタルカメラ「IXYシリーズ」の鏡筒部分(黒)に、水性塗料を用いた塗装を開始しました。
2010年の管理化学物質排出量は、生産量回復の影響もあり、前年比25%増加し、971トンとなりました。また、PRTR制度※2対象物質の排出量は前年比56%増加し、114トンとなりました。
2011年も、化学物質の排出量削減に向け、効果的な対策を実施していきます。
- ※1 管理化学物質
使用や管理に際して何らかの規制がかかる化学物質。人に対して有害なものや、可燃物や環境破壊(地球温暖化など)を引き起こすものなどを含む。 - ※2 PRTR制度
化学物質排出移動量届出制度。PRTRはPollutant Release and Transfer Registerの略で、化学物質の環境中への排出量および廃棄物に含まれて移動する量を登録届出、公表する仕組み。

管理化学物質排出量・PRTR制度対象物質排出量の推移
| 廃絶物質名 | 廃絶時期 | |
|---|---|---|
| オゾン層破壊物質 | CFC(クロロフルオロカーボン)15物質 | 1992年12月 |
| 1,1,1-トリクロロエタン | 1993年10月 | |
| HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)34物質 | 1995年10月 | |
| 温室効果ガス※1 | PFC(パーフルオロカーボン) | 1999年12月 |
| HFC(ハイドロフルオロカーボン) | 1999年12月 | |
| 土壌汚染物質 | トリクロロエチレン | 1996年12月 |
| テトラクロロエチレン | 1996年12月 | |
| ジクロロメタン(洗浄用途) | 1997年12月 | |
| ジクロロメタン(薄膜塗工用途)※2 | 2003年10月 | |
- ※1 半導体用途は除く。
- ※2 国内は2001年12月廃絶完了。
| 政令番号 | 成分名 | 排出量 | 移動量 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 大気排出量 | 公共用水域排出量 | 下水道移動量 | 廃棄物移動量 | 再資源化物移動量 | ||
| 007 | アクリル酸ノルマル-ブチル | 46 | 0 | 0 | 0 | 84,323 |
| 020 | 2-アミノエタノール | 229 | 0 | 623 | 415 | 30,134 |
| 031 | アンチモン及びその化合物 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1,878 |
| 044 | インジウム及びその化合物 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 053 | エチルベンゼン | 612 | 0 | 0 | 603 | 24,074 |
| 071 | 塩化第二鉄 | 426 | 0 | 0 | 0 | 4,725 |
| 080 | キシレン | 10,654 | 0 | 0 | 3,492 | 104,901 |
| 082 | 銀及びその水溶性化合物 | 0 | 1 | 0 | 13 | 481 |
| 125 | クロロベンゼン | 33,167 | 0 | 0 | 4,165 | 418,381 |
| 127 | クロロホルム | 58 | 0 | 0 | 0 | 1,880 |
| 128 | クロロメタン(別名塩化メチル) | 0 | 0 | 0 | 0 | 2,431 |
| 150 | 1, 4-ジオキサン | 881 | 0 | 0 | 0 | 1,157 |
| 181 | ジクロロベンゼン | 0 | 0 | 0 | 0 | 18 |
| 202 | ジビニルベンゼン | 0 | 0 | 0 | 0 | 16 |
| 232 | N,N-ジメチルホルムアミド |
1,738 | 0 | 0 | 0 | 121,995 |
| 240 | スチレン | 3,679 | 0 | 0 | 0 | 116,463 |
| 296 | 1, 2, 4-トリメチルベンゼン | 15,290 | 0 | 0 | 0 | 50,298 |
| 298 | トリレンジイソシアネート | 0 | 0 | 0 | 0 | 5,688 |
| 300 | トルエン | 40,825 | 0 | 0 | 14,590 | 80,914 |
| 305 | 鉛化合物 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1,163 |
| 306 | 二アクリル酸ヘキサメチレン | 0 | 0 | 0 | 0 | 1,067 |
| 308 | ニッケル | 0 | 0 | 0 | 0 | 745 |
| 309 | ニッケル化合物 | 0 | 0 | 25 | 0 | 6,981 |
| 343 | ピロカテコール(別名カテコール) | 134 | 0 | 0 | 0 | 5,747 |
| 349 | フェノール | 14 | 0 | 0 | 11 | 122 |
| 374 | ふっ化水素及びその水溶性塩 | 424 | 23 | 2,289 | 113 | 9,518 |
| 384 | 1-ブロモプロパン | 766 | 0 | 0 | 133 | 89 |
| 392 | ノルマル-ヘキサン | 4,283 | 1 | 0 | 733 | 1,363 |
| 395 | ペルオキソ二硫酸の水溶性塩 | 0 | 0 | 0 | 0 | 15 |
| 408 | ポリ(オキシエチレン)=オクチルフェニルエーテル | 0 | 0 | 0 | 1 | 3,151 |
| 412 | マンガン及びその化合物 | 0 | 0 | 0 | 0 | 179 |
| 448 | メチレンビス(4, 1-フェニレン)=ジイソシアネート | 0 | 0 | 0 | 0 | 24,048 |
- ※ 第一種指定化学物質の0.1トン以上の使用は49物質、上記データはそのうち1トン以上の使用に対する排出・移動量。
- ※ 土壌への排出および敷地内への埋立はありません。
- ※ 上記データの集計期間は2010年1~12月です。
「第13回オゾン層保護・地球温暖化防止大賞」の優秀賞受賞
2010年9月、大分キヤノンとキヤノン(株)が共同で取り組んだ「フッ素系溶剤の回収・リサイクルによる地球温暖化防止対策」が、「第13回オゾン層保護・地球温暖化防止大賞」の優秀賞を受賞しました。
同賞は、1998年に日刊工業新聞社がオゾン層保護と地球温暖化対策の促進を図るべく創設したもので、「オゾン層の破壊防止」「地球温暖化の抑制」の両テーマに関する技術・システムおよび取り組みを対象とする顕彰事業です。
今回の受賞は、デジタルカメラなどの部品製造工程に使用される溶剤を、温暖化係数の低いフッ素系溶剤(HFE)に代替するだけで、その大気放出分の9割以上を回収・リサイクルするなど、温暖化防止対策を徹底したことが評価されたものです。

東海大学学友会館での授賞式
感光ドラム塗工ラインへのVOC処理装置の導入
複写機などに搭載されている感光ドラムの塗工ラインでは、メタノールなどのVOC(揮発性有機化合物)を使用しています。
キヤノンでは、従来からVOCをはじめとする管理化学物質の排出量削減に取り組んできましたが、その効果をより高めるために、排出量の多い塗工ラインに着目。2008年3月から塗工ラインをもつ工場において、VOC処理装置の導入を開始しました。
この装置は、VOCガスを熱分解して浄化するもので、連続処理が可能なため、高い処理効率が得られます。2010年現在で、国内で8台を導入しています。
装置を導入した各工場では、あわせて装置の密閉化などの対策を実施しており、生産単位当たりの管理化学物質排出量を大きく削減しています。

VOC処理装置
PCB廃棄物の管理
キヤノンでは、生体・環境へ影響を及ぼすPCB(ポリ塩化ビフェニル)について、法令に準拠し厳重に管理しています。
2010年12月現在、PCB廃棄物を保管している事業所は19拠点あり、コンデンサー・トランス計170個(低濃度PCB廃棄物も含む)、蛍光灯安定器計3,598個を保管しています。
これらについては、2004年末からPCB廃棄物の処理を開始した日本環境安全事業(株)に処理を申し込んでおり、順次処理される予定です。
大気や水域への影響
キヤノンは、大気汚染や酸性雨の主要因となるNOx※1やSOx※2、海や湖沼の富栄養化の原因となるリンや窒素などの環境負荷物質の削減、水域での環境負荷指標であるBOD※3、COD※4の低減に努めています。
大気汚染防止のために、重油から灯油への燃料転換や低NOxボイラーの導入を推進。また、水域の環境保全のために、最新の排水処理装置を設置し、リンや窒素など環境負荷物質の削減に取り組んでいます。
さらに、地域ごとに定められている規制やキヤノンが独自に定めた基準をもとに、各事業拠点から排出される環境負荷物質を定期的に測定しています。
- ※1 NOx(窒素酸化物)
大気汚染や酸性雨、光化学スモッグの主原因で、燃料中の窒素分の酸化や高温燃焼時に空気中の窒素ガスが酸化されることにより発生。 - ※2 SOx(硫黄酸化物)
大気汚染や酸性雨の主原因で、石油や石炭などの化石燃料を燃焼することにより発生。 - ※3 BOD(生物化学的酸素要求量)
水中の有機物を微生物が分解する時に消費する酸素量。BODの値が大きいほど水質は悪い。 - ※4 COD(化学的酸素要求量)
水中の有機物を酸化剤で酸化するのに消費される酸素量。CODの値が大きいと水が汚れている可能性がある。
土壌・地下水汚染の浄化状況
キヤノンでは、土壌・地下水環境の保全を重要視し、1980年代から、過去の有害物質使用履歴をもとに自主的な調査を継続的に実施しています。
1994年には監視井戸による汚染の継続監視を義務化し、地下水から法定水準を超える量の汚染物質が発見された場合は、汚染物質拡散防止のための揚水処理や、汚染物質そのものを取り除く掘削除去工事など、必要な措置をとってきました。
また、新規に土地を取得する場合には、事前に土壌調査を実施し、必要に応じて土壌浄化などの対策を実施して浄化完了後に購入することを基本方針としています。
このほか、2003年に施行された土壌汚染対策法では、指定区域の浄化工事後2年間のモニタリングで土壌の浄化を確認することが定められていますが、キヤノンでは、自主的に国内全拠点の土壌・地下水汚染の有無をモニタリングしています。
さらに、土壌汚染対策法の施行を踏まえて2006年7月に、改めて「土壌・地下水汚染に対する基本方針」を策定し、以降はこの方針のもとに対策の徹底を図っています。

| 事業所 | 対象物質 | 2011年5月 時点での状況 |
対応 |
|---|---|---|---|
| 下丸子 | トリクロロエチレン等 | 浄化中 | 原位置浄化、掘削除去、水質測定 |
| 目黒(研修棟) | テトラクロロエチレン等 | 浄化中 | 原位置浄化、水質測定 |
| 目黒(宿泊棟) | テトラクロロエチレン等 | 浄化中 | 原位置浄化、水質測定 |
| 玉川 | テトラクロロエチレン等 鉛及びその化合物等 |
浄化中 | 原位置浄化、掘削除去、被覆、水質測定 |
| 宇都宮第一駐車場 | フッ素及びその化合物等 | 浄化中 | 揚水処理、掘削除去、水質測定 |
| 鹿沼 | テトラクロロエチレン等 鉛及びその化合物等 |
浄化中 | 揚水処理、原位置浄化、掘削除去、水質測定 |
| 平塚(第1拠点) | フッ素及びその化合物等 | 浄化中 | 揚水処理、被覆、水質測定 |
| 取手 | トリクロロエチレン等 六価クロム及びその化合物等 |
浄化中 | 揚水処理、原位置浄化、掘削除去、水質測定 |
| 小杉 | テトラクロロエチレン等 | 浄化中 | 原位置浄化、掘削除去、水質測定 |
| キヤノン電子(横瀬) | トリクロロエチレン等 | 調整中 | 水質測定 |
| キヤノン電子(山田) | トリクロロエチレン等 | 調整中 | 水質測定 |
| キヤノンセミコンダクター エクィップメント |
1,1-ジクロロエチレン等 鉛及びその化合物等 |
浄化中 | 揚水処理、掘削除去、被覆、水質測定 |
| 長浜キヤノン | 六価クロム及びその化合物等 | 浄化中 | 被覆(土壌改良剤による汚染)、水質測定 |
- ※ 浄化中の拠点は、行政に報告しています。
- ※ 2011年の報告より、「土壌・地下水の浄化状況」に関する上記一覧表については、より平易でご理解いただきやすいものとするために、記述の方法を一部変更しました。
2010年のレビュー
地下水定期モニタリングにおいて、新たな超過が1件判明しました。キヤノン(株)平塚事業所の監視井戸において、フッ素が基準値を超過したものです。浄化に向けた対策として、行政との折衝の結果、該当監視井戸の揚水を計画しています。
2010年7月には、2010年3月に浄化が完了していたキヤノンアネルバの旧府中本社において、行政側と取り決めたモニタリングが終了しました。
2010年4月の土壌汚染対策法の改正にともない、キヤノン(株)宇都宮事業所(鹿沼分室)における再配置計画が改正法の適用となりました。そのため、法に沿った土壌調査を実施中です。
今後の浄化対策
キヤノンの国内事業所で、2011年現在で汚染が存在する事業所は13拠点あります(「土壌・地下水の浄化状況」に関する上記一覧表参照)。これら拠点については、基本方針にもとづき浄化完了に向けて法に定められた汚染の除去などの措置を確実に実施しています。
また、海外拠点についても、各拠点で使用する化学物質を把握するとともに、各拠点の所在する国や地域の基準を把握し、各地の状況にあわせたリスク対応を展開しています。
なお、基準がない国・地域についても、日本から厳守すべき基準値、もしくは目標となる指針値を設定するなどの対応を実施しています。例えばマレーシアでは、地下水の汚染状況を把握するために日本と同レベルの基準値を採用しています。